時間をかけて育んでいく愛情 ページ37
私が目にしているのは、長寿そうな大きな木。そして周辺に生い茂る緑。ここまでくるともう、世界観が違う。
いや、遠目から見てもこの異質さには気づいていたけれど、いざ目の前にするとツッコまずにはいられない。ここ、本当にジムなの!?
とりあえず、入り口と思われるところから草木の道を進んでいくと、急に開けた場所に出た。
そこはバトルフィールドで、木洩れ日がフィールド上を明るく、優しく照らしていた。
「おう! 来なすったか」
そのさらに奥から現れたのは、剪定ばさみだろうか、大きなはさみを持ったおじいさん。
「わたしがジムリーダーのフクジじゃ。チャレンジャーさんじゃろ?」
「はい! ジム戦お願いします! って言いたいところなんですけれど、その前に一つだけ訊いてもいいですか?」
まず気になることをはっきりしておきたい。
「ここの草木のお手入れって、もしかしてフクジさんが……?」
「もちろんじゃよ。まあこの歳じゃ、全部一人でというわけにはいかんが、出来る限りはやっておる。決して手入れを怠ることはないなぁ」
そう誇らしげに語るフクジさん。なんていう人だ。この広大な敷地に広がる草木の手入れなんて、途方もない重労働だろうに。
圧倒される私に、フクジさんはこう言った。
「草木の手入れも、ポケモンを育てることと同じようなものじゃ。大事なのは時間をかけて育んでいく愛情。それがあれば、どんなに大変なことでも乗り越えられる。そう思わないかい?」
確かに、そうだ。私も、みんなのためなら大変なことでも成し遂げられる。
「そうですね。私も、そう思います」
ふっとフクジさんの顔に優しい笑みが浮かんだ。見る者を安心させる笑みだ。
「きみとはもう少し話をしていたいが、どうも長くなってしまいそうでのう。
だから、まずはここらでジム戦といこうかの」
「はい!」
私は返事をすると、バトルフィールドの端に行き、ツドキとレイアをボールから出した。
「ツドキ、レイア、ここから見守っていてね」
「キッス!」
「むぅ!」
二人は澄んだ瞳を輝かせ、これから始まるバトルを心待ちにしているようだった。
「その二体、いい目をしておる。きみとの友情がひしひしと伝わってくるのう。
きみがどんな戦いを見せてくれるか、楽しみじゃよ」
フクジさんがそう言いながら所定の位置に着き、私もフクジさんと向かい合うように立つ。
すると審判の人がルール説明を始める。
この緊張と興奮が混ざり合う時間……最高だ。
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頂志桜(サム)(プロフ) - はじゅさん» お久しぶりです!コメントありがとうございます!逆ギレされるほど気に入ってもらえて、うれしいです(謎) でも、期末の勉強を疎かにしてはいけませんよ〜(と言っている私もテスト期間なので人のこと言えませんが……笑) お互い頑張りましょう! (2018年6月26日 22時) (レス) id: 1b8d8957f6 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - おかげで期末全然勉強できません!!(こんなに面白い作品をありがとうございます神様) (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - お久しぶりです!もういつまで経ってもなんでこんなに面白いんですか!!(謎の逆ギレ (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 深雪さん» コメントありがとうございます!そして、お誕生日おめでとうございます!!実は、このシリーズも今日が誕生日なんです!感慨深いですね〜 (2018年6月12日 21時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
深雪 - きょうはわたしのたんじょうび (2018年6月12日 12時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2018年6月9日 15時