【最強メガシンカ】世界でいちばん頑張っている君に 〜〜15th Sacrifices〜〜【ポケモンXY特別編】

同じ夢を見た者 ページ34

俺は、もう、自分がどんな反応をしたか、自分でわからなかった。けれど、教官が切ない表情で「ごめんなさいね」と謝ったことからすると、平常心を保ってはいられなかったみたいだ。

「それはきっと、夢だったでしょう？」

教官が表情はそのまま、俺の方に一歩近づいた。まるで親鳥がたどたどしく羽ばたく雛を見かねて助けてあげようとするように。

「はい……夢の中で、あいつは……」

俺が言葉に詰まりながら伝えようとすると、教官は俺の肩を持って首を振った。

「つらいなら、最後まで言わなくても構わないわ。私はもうわかっているから」

そう言って教官は俺に椅子を勧めた。
俺は素直に勧められた椅子に座り、教官はそんな俺の斜め前に椅子を移動させ、座った。

「どうして、わかるんですか？」

この人なら俺が悲惨な夢を見たことを見抜くとは思っていたが、ここまで正確に内容を当てられたのは予想外だった。
結局、この人を前にして隠し事はできない。
Aのことを考えないようにすることはできなかったな。

「私も、その夢を見たの。Aを抱いて泣きながら懇願している青年を、後ろから見つめることしかできない。そんな、悲しい夢をね」

俺の見た夢と繋がっている。それぞれの視点からという違いはあるものの、起こったことは同じだ。

教官は悔しそうな表情で、「きっと、Aもその夢を見たんだと思う」と言い放った。
思い当たる節はありすぎるほどあった。やっぱりな、とさえ思った。
不穏な夢を見たと言い始めたあの日、深刻な、泣きそうな顔であいつは「あなたを悲しませることになる」と言ったんだ。俺を一番悲しませることは自分がいなくなることだというのを、あいつはちゃんと理解していたんだ。

「信じられないかもしれないけれどね、私たちが見たあの夢は、恐らく予知夢よ。近い将来、現実になってしまうことなの……」

近い将来、Aはあんな無惨な最期を迎えるというのか……。
俺はやりきれない気持ちでぐっと拳を握った。


ちょっと待て。それならあの声はどうなる？ 教官もあの声を聞いたのか？

迷いながらも訊いてみた。すると、教官は首をかしげて「それは初耳だわ」と目を丸めた。
教官が内容を知りたがったので、俺はできるだけあの声に忠実に内容を語った。

「え……そんな……まさか……あの子……！」

教官はうれしいのか恐ろしいのか悲しいのか、椅子から立ちあがり、口に手をあてた。
が、俺の視線に、言いかけた言葉をしまいこんだ。

謎めいた言葉→←不気味な恐怖

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す