曖昧な記憶 ページ28
【アラン視点】
「アランくん!!」
教官の呼びかける声ではっと気づいた。教官とコルニの心配そうな視線が痛く突き刺さる。
そうか、俺はコルニを見送りに、玄関まで来たんだったな。
「どうしたの? 心ここにあらずって感じだったんだけど……」
コルニが胸に手を当て、奇妙なものを見るような目で見てくる。
「いや……なんでもない」
言いながら俺は、今何があったのか思い出していた。二階から下りてきて、教官とコルニが最後の会話を楽しんでいるのを聞いて……そこからどうしたんだっけな。記憶が曖昧でわからない。
その曖昧な記憶の中に、Aの微笑む姿が見えた気がした。優しい微笑み。
ここにAが来ることはまだないのに、なぜだろうな。
「たぶん、疲れてるんじゃない? 私と戦ったんだし、疲れていても仕方ないよ」
コルニがそう言い、教官もそれに同意するようにうなずいている。
俺、そんなに疲れているように見えるのか。自分ではそうは思わないのだが……。
「アランくん、君はすぐに休んだ方がいいと思うわ」
教官がやけに真剣な眼差しでそう忠告する。そんなに深刻な状況なのか?
「……わかりました。あとで少し、仮眠をとることにします」
とりあえずはそう言い、コルニと別れの言葉を交わした。
「私、絶対君はカロスリーグで優勝できるって思う。頑張ってね、アラン」
「ああ。またな、コルニ」
その言葉を発したとき、不思議な感覚に見舞われた。
俺……さっきも同じ言葉を言わなかったか? それも……Aに向かって。
視界にうっすらともやがかかり、どこかの風景がサブリミナルのように一瞬映し出されているような気がする……。
「うん! 次に会ったときも、またバトルしようね!」
コルニが元気よくそう言ったことで、ぱっともやが消え、なんとか現実世界に戻ってこれた。あのままでいたら、また記憶が曖昧になりそうだった。
「じゃあ、シトラスさん、アラン、またいつか!」
そう言ってコルニは勢いよく玄関を飛び出していった。せわしないな。
「アランくん」
教官がいつもと違う声のトーンで呼び止めた。
「教官?」
振り返ると、険しい顔をした教官が立ちふさがっていた。
「さっきのは、無意識だったの?」
教官の言う「さっき」が何を指しているのかがわからず、俺は黙り込むしかなかった。
「そう、それならきっと無意識なのね……」
一人で勝手に納得されているけれど、俺には何のことやらさっぱりわからない。
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頂志桜(サム)(プロフ) - はじゅさん» お久しぶりです!コメントありがとうございます!逆ギレされるほど気に入ってもらえて、うれしいです(謎) でも、期末の勉強を疎かにしてはいけませんよ〜(と言っている私もテスト期間なので人のこと言えませんが……笑) お互い頑張りましょう! (2018年6月26日 22時) (レス) id: 1b8d8957f6 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - おかげで期末全然勉強できません!!(こんなに面白い作品をありがとうございます神様) (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
はじゅ - お久しぶりです!もういつまで経ってもなんでこんなに面白いんですか!!(謎の逆ギレ (2018年6月26日 20時) (レス) id: 26f7e5e552 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 深雪さん» コメントありがとうございます!そして、お誕生日おめでとうございます!!実は、このシリーズも今日が誕生日なんです!感慨深いですね〜 (2018年6月12日 21時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
深雪 - きょうはわたしのたんじょうび (2018年6月12日 12時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2018年6月9日 15時