7.逢引 ページ11
｢37.6℃。熱ね｣
どうする？帰る？とズバッと言う保健室の先生に驚く。熱、あったんだ。何故か他人事のように感じてしまった。
｢……熱、ですか｣
｢微熱だけどね。こんな変な時期に……まだ残暑が残ってるからかしら。｣
｢あー……多分夜に全力で走ったから、かと｣
｢へぇ、全力で？…ふ〜ん、失恋とか？｣
｢……そうなんですかね｣
先生は数少ない女性の方なので話しやすく、度々会話する先生だった。30代だが独身。恋バナが好きな先生のいつも通りのジョークを軽く受け流すと、今度は先生が驚いたような顔を見せた。
｢そうなんですかねって……恋、してたの｣
｢恋した事がないから分からないですけど……多分恋じゃないです｣
私がそう答えると一気に興味が無くなったのか、なぁんだと素っ頓狂な声を出して温度計をしまう。はい、と渡された冷たいシートを渡されたが、いい歳しておでこに付けるのは気が引けたので首元に貼った。
冷たいシートがなぜだか目元をじんわりと熱くした。
あの気持ちが、恋などという感情で済めば良かったのだろうか。
｢良かったわね、微熱で。受験生でしょ？大変な時期だけど、これなら直ぐに治りそうね｣
まぁ、貴方は演劇があるから関係ないかもしれないけど。そう軽く言いながら先生は片付けを始めた。
そうだ、授業。折角忘れかけていたのに。私の成績を知っているから軽く言ったのかもしれないが、今の私には逆効果だ。
｢結局、どうする？帰る？私は帰った方がいいと思うけど｣
｢……帰ります。歩けるのでこのまま……家には電話、しなくて大丈夫です｣
家に今、家族いないので。
そう告げると一瞬複雑そうな顔をして、直ぐに笑顔に戻った。
｢そう……まぁ、明日は土日で休みだからね。しっかり休みなさい。｣
お礼を言って、保健室から出ていく。気を使ってくれたのだろう。
首元に手を当てる。抑えると冷たさが、火照った首を伝って頭にまで登っていくようで心地よかった。
｢駄目になってるじゃない。｣
はは、と乾いた笑いを出して俯いたが、また首元の冷たさに反して、熱い目頭から零れそうになる涙が厄介だった。
大丈夫。私はいつも耐えてきたのだから。らしくないって言われてしまっても大丈夫。こんなの直ぐに巻き返せる。
なんとか涙を堪えて顔を上げて歩きだそうとしたのに
｢どうしたんです？そんな弱った顔をして｣
｢な、んで｣
｢見てて情けないですよ。貴方仮にも役者でしょう｣
こんな時にだけ出てこないでよ、渉。
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そると(プロフ) - すごく面白かったです。更新されることがあったら楽しみに読ませて頂きます！待ってます (2020年4月28日 19時) (
レス) id: 663d9c3cae (このIDを非表示/違反報告)
チョコトースト(プロフ) - ちよりさん» 作品自体楽しく読ませて頂いていたのでとても嬉しいです…返信と対応ありがとうございます!これからもちより先生の日々樹渉を楽しみに待ってます!長々と失礼しました… (2020年1月27日 23時) (レス) id: 9ac9e5b2c4 (このIDを非表示/違反報告)
ちより(プロフ) - チョコトーストさん» 念の為日々樹渉の言葉を全て違う言い回しにしてきました汗 不快にさせてしまったようなら申し訳ないです...！もしまだ何かございましたら詳しくは私のTwitterのDMに書かれても大丈夫です汗 (2020年1月25日 23時) (レス) id: 5d8f01d30c (このIDを非表示/違反報告)
ちより(プロフ) - 64さん» ありがとうございます〜！頑張ります！ (2020年1月25日 23時) (レス) id: 5d8f01d30c (このIDを非表示/違反報告)
チョコトースト(プロフ) - 面白かったです。ですがこれと似た台詞が使われている日々樹渉2次創作漫画を読んだことがあります。小説自体は凄く好みだっただけにもやもやしております。よろしければその漫画の存在をご承知かどうかだけでもお教え下さい。 (2020年1月22日 17時) (レス) id: 9ac9e5b2c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちより | 作成日時：2019年11月5日 20時
