【朔間凛月】again (ページ6)

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眠たげな朝２ページ6

怪盗は眠たげに枕に顔を埋めると、何事も無かったかのように寝始めたので、慌てて身体を揺らす。

「……安眠妨害なんだけど」

そう言ってまた眠り始めたので、今度は勢いよく枕を引っこ抜いた。

すると不機嫌そうに目を開ける。

「……あのさぁ、あんたは知らないだろうけど俺は吸血鬼なの。吸血鬼って知ってる？知ってても知って無くても教えてあげる。朝が敵なの。わかったらとっとと寝かせてよね～」

なんて自分勝手な厨二病なんだ。もう成人しててもいい頃だろうに。

呆然としながら、現代人のこれからの未来が不安になっていく。

そこに私が存在するとは分からないけれど、少なくとも目の前にいる人間はどんな未来でもスヤスヤと眠ってそうなので、私は諦めて机の引き出しから日記を取り出した。

今日の日付を書いて、昨日の出来事を書く。
残念なことに、後で読み返したら面白そうな彼との出会いは今日に含まれるためまだ書けない。つまらない話をつらつらと並べることしかできない。

何もすることがなく、日記をパラパラと捲ってページを遡っていると、普段よりも乱雑に書かれている文字見つけた。

この日は忘れたくても忘れられない、哀しい日。

親を失って今の義親に引き取られた日。

それでも大切に、大切に、まるで壊れ物を扱うかのように、守るように育ててくれた義親には感謝しなくてはならないのかもしれない。

けれど、つまらなかった。

窓の外から楽しそうな声が聞こえる。この声の高さはきっと女子高校生だろう。私も普通に生きていれば、きっとそれくらいの年だ。

けれど、大切に大切に、異常なまでに大切にされてしまった私は、あの日から一度も外に出ていない。

つまらなくなった日記を再び閉じた。

ベッドに目を向けると、怪盗は気持ちよさそうに眠っている。

世間的には悪者と言われているであろう彼を、私は救世主だと思う。

私もいつか、この人のように安らかに眠りたい。

カーテンの隙間から溢れている光に、私は静かに目を閉じた。