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出会いの夜2 ページ4

変な子だなあと思いながら行動を見ていると、ふと、彼女がこちらを向いた。
あ、と思った時には既に遅く、彼女と目が合ってしまう。

ぼんやりとしていた彼女の瞳が徐々に開かれていった。そして、口を開け声を出そうとしたのを察した俺は、慌てて彼女の口を塞ぐために手を伸ばした。

だが、娘は自らの手で自分の口を塞ぐ。
予想外だったため、伸ばした手の行き場をなくした。

娘は瞳に恐怖を浮かべているが、強い意志を持って俺を睨んでいる。
日本人らしく真っ黒な瞳を持った娘に、俺はやり場をなくした手を自身の口を塞いでいる手に持っていき、ゆっくりと外させた。


「ねぇ、三億の宝石ってどこにあんの?」


どうせ不法侵入やらで捕まる可能性があるから、この際さっさと聞いてさっさと帰ろう。スーちゃんに何かあったら大変だから。

娘は小さな唇を震わせて声を吐き出した。


「……怪盗?」
「そ、3億の宝石があるって聞いて盗みに来たわけ。アンタだってこんな見知らぬやつと一緒にいるなんて耐えられないでしょ。ほら、さっさと教えて」


娘は考えるように沈黙する。表情が読み取れないのは光の加減か、それとも元から読み取りにくい表情なのか。


「……条件があります」


人差し指を立てて、俺を見あげた。

なんだかんだで握ったままの反対の手は女の子らしく華奢だった。
ゆっくりとその手を離す。


「今日をいれて三日後の夜、私をここから連れ出してください。その時に宝石は渡します。」


それは奇しくも、任務の達成期間。
あと、二日。夜を過ごせばいいだけだ。
思った以上に簡単な任務になってくれて有難い。これなら吸血鬼にとって最大の敵である日光が出ている時間帯に活動しなくても済む。


「じゃあ、それで」


俺の返事を聞いた娘はほっと息をついた。
そして、僅かに微笑みながら手を差し出す。


「ちゃんと盗んでくださいね、怪盗さん」
「別に俺が盗むのはアンタじゃないんだけど……。まぁ、いいか」


俺はもう一度その手を握った。






朝はまだ来ない。

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Knights を護る騎士でいたかった - とっても面白かったです!次回作も期待してます! (2017年9月23日 11時) (レス) id: 7e00625b4b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:つららっちょ | 作成日時:2017年9月23日 0時

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