検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:15,406 hit

終わりの夜2 ページ11

血の匂いが辺りに充満して、思わず出てきそうになる吸血鬼としての本能を押さえ込む。


「お前を引き取った理由を教えてやろう。お前の体に埋め込まれている宝石のためだ。お前は幼いころその宝石を飲み込んだはずだ。そして検査の結果、その宝石はまだお前の中にあるようじゃないか」


宝石は体内にあるということ?

道理でいくら探しても見つからないわけだ。道理でAの義親は彼女を外に出さないわけだ。
道理で義親は彼女に執着するわけだ。

咳き込んで血を吐いたAは、どうやら意識を保っているようで苦痛に顔を歪ませた。

そんな彼女に近寄っていく男に、俺らしくもなく声が出た。


「あんた、育てた娘を殺して、宝石奪って、何が楽しいわけ?」
「楽しいも何も無い。そもそも育てた覚えも無い。私たちはこの宝石を手に入れるために、"これ"を管理していただけだ」


だめだ、こいつは人間じゃない。

人外の俺が言うのだから確かだ。

気持ち悪さに吐き気が込みが込み上げてくるが、何とか押さえ込んで立ち上がった。

もしも宝石が本当に彼女の体内にあるのだとしたら。

Aを殺さずに体内から宝石を取り出すのは、この状況ではまず不可能だ。でも、このままだと宝石も奪えないし、Aを見殺しにするという夢見の悪いことになる。王様は、彼女を連れて「宝石もって帰ってきたよ〜」といった俺をきっと怒らないだろう。宝石を奪うというミッションはこなした事になるしね。

それが最善策だと判断した俺は、近くにあった椅子を男にぶん投げた。

見事直撃して倒れた男を横目に、彼女を回収する。

担ぎ方を変えるために、背中を支えながら一度彼女を窓に座らせた。
 


「約束の順序は逆になるけど、先に連れ出してあげる」
「凛月……」


息絶え絶えに紡いだ俺の名前。表情が和らいだその瞬間









「あ」









ぽたり、ぽたりと外に血液が落ちてゆく。



顔色を変えた彼女の胸元を見ると、食用ナイフが深々と刺さっていた。

振り返ると、義母である女が、化け物のような顔をしてこちらを睨み付けている。



「私たちの……ホウセキ……かえせぇ」







そう言って座り込んだ女。もう一度Aに目を向けると、先ほどまで光のあった瞳に、完全な闇が訪れようとしていた。

終わりの夜3→←終わりの夜



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (41 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
25人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Knights を護る騎士でいたかった - とっても面白かったです!次回作も期待してます! (2017年9月23日 11時) (レス) id: 7e00625b4b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:つららっちょ | 作成日時:2017年9月23日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。