終わりの夜2 ページ11
血の匂いが辺りに充満して、思わず出てきそうになる吸血鬼としての本能を押さえ込む。
「お前を引き取った理由を教えてやろう。お前の体に埋め込まれている宝石のためだ。お前は幼いころその宝石を飲み込んだはずだ。そして検査の結果、その宝石はまだお前の中にあるようじゃないか」
宝石は体内にあるということ?
道理でいくら探しても見つからないわけだ。道理でAの義親は彼女を外に出さないわけだ。
道理で義親は彼女に執着するわけだ。
咳き込んで血を吐いたAは、どうやら意識を保っているようで苦痛に顔を歪ませた。
そんな彼女に近寄っていく男に、俺らしくもなく声が出た。
「あんた、育てた娘を殺して、宝石奪って、何が楽しいわけ?」
「楽しいも何も無い。そもそも育てた覚えも無い。私たちはこの宝石を手に入れるために、"これ"を管理していただけだ」
だめだ、こいつは人間じゃない。
人外の俺が言うのだから確かだ。
気持ち悪さに吐き気が込みが込み上げてくるが、何とか押さえ込んで立ち上がった。
もしも宝石が本当に彼女の体内にあるのだとしたら。
Aを殺さずに体内から宝石を取り出すのは、この状況ではまず不可能だ。でも、このままだと宝石も奪えないし、Aを見殺しにするという夢見の悪いことになる。王様は、彼女を連れて「宝石もって帰ってきたよ〜」といった俺をきっと怒らないだろう。宝石を奪うというミッションはこなした事になるしね。
それが最善策だと判断した俺は、近くにあった椅子を男にぶん投げた。
見事直撃して倒れた男を横目に、彼女を回収する。
担ぎ方を変えるために、背中を支えながら一度彼女を窓に座らせた。
「約束の順序は逆になるけど、先に連れ出してあげる」
「凛月……」
息絶え絶えに紡いだ俺の名前。表情が和らいだその瞬間
「あ」
ぽたり、ぽたりと外に血液が落ちてゆく。
顔色を変えた彼女の胸元を見ると、食用ナイフが深々と刺さっていた。
振り返ると、義母である女が、化け物のような顔をしてこちらを睨み付けている。
「私たちの……ホウセキ……かえせぇ」
そう言って座り込んだ女。もう一度Aに目を向けると、先ほどまで光のあった瞳に、完全な闇が訪れようとしていた。
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Knights を護る騎士でいたかった - とっても面白かったです!次回作も期待してます! (2017年9月23日 11時) (レス) id: 7e00625b4b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:つららっちょ | 作成日時:2017年9月23日 0時