手当て ページ26
石)「刑部、帰ったぞAの手当てをしてやりたい」
一見眠っているようにも見えるAを抱え、ゆっくりと部屋に入っていく。
刑)「ようやっと帰ったか三成、Aに何か・・・・」
すれ違い際に見えたAの姿に何か違和感を感じた。
いつもより頬に赤みがなく、寝息も聞こえなければ、ピクリとも動かない。
三成の様子も、Aに何かあった時はいつもならもっと慌ただしいはずなのに、何故か穏やかだった。
刑)「その娘・・・」
口を開きかけたが、その先を確かめるのはもう少し後にした。
もし事実なら、刑部自身にとっても快いものではなかったからだ。
ーーーーー
外の光が障子で遮られ、薄暗く静かな部屋の中
布の水を絞る音と、一人の男の声だけがする。
石)「痛いか?」
首の辺りにこびりついた血をそっと温かい布で拭き取り、Aの足を見る。
石)「足もこんなに・・・」
傷ついた足を持ち上げ、自分の膝の上に乗せてから綺麗にしていく。
石)「私が怪我をして帰って来た時にお前は、手当てをしてくれたな」
拭き終わって傷痕だけになった足を下ろし、再びAの枕元へ正座する。
石)「寝ていれば、可愛らしいものなんだが」
手を伸ばし、額から髪へとゆっくり動かす
石)「・・・やはり、多少の騒がしさは仕方ないが、その瞳を拝みたいものだな」
動かしていた手を止め、Aの顔を見据える。
石)「いい加減起きたらどうなんだ・・・この寝坊助が・・・・」
いくら三成が話かけようと、Aが返事をする事はない。
俯き、手の甲に落ちた液体が自分の涙であることに、三成は気づかなかった。
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作者名:おもち | 作成日時:2014年4月12日 20時