あんさんぶるな王子様【短編集】 (ページ17)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:26,735 hit

♪鳴上嵐【リクエスト】ページ17

嵐side

貴「おはようございます、嵐様」

嵐「おはよう、Aちゃん。ねぇ、アタシのくし、何処にあるか知らないかしら？」

貴「洗面所にございます」

嵐「あら、本当に？ごめんなさいね、ありがとう」

貴「いえ。身なりを整え終わりましたら、朝食がご用意されていますので小ホールへ起こし下さい」

丁寧に頭を下げ、アタシの前から去っていく

誠実な態度を取ってくれるAちゃん

彼女の事を考える度に、胸がざわつくのよね

・

貴「嵐様、お席はこちらです」

急いで髪を整え、小ホールにやって来たアタシ

忙しなく働くAちゃんの背中をじっと見つめる

……好き、なのにね

こんなに近い距離なのに、なかなか言えないの

メイドと王子が恋って……ねぇ？

世間からの目もあって、一歩踏み出せない

それでも、良いと思ってた

貴方が側にいてくれれば、それで

でもね、最近

執事「Aさん、お疲れ様です」

執事「Aちゃーん！お疲れー！」

貴「お疲れ様です、佐藤さん、鈴木さん」

ライバルは沢山いるんだって、気付かされたの

そうよね、このお城だけでも、男の子は沢山いる

外に出たら、お城の比にならない位の男の子がいる

アタシだけのAちゃんじゃないわ

嵐「……難しいわねぇ」

そんな時、ふと耳に入って来たのは

「Aさんって、可愛くね？」

執事さん達の会話だった

「おい、年上に可愛いって失礼だろ」

貴「あ、竹本くん！嵐様のお着替えを、夕方までにお部屋に用意してもらって良いかな？」

執事「は、はいっ」

貴「よろしくね」

執事「……やっぱ可愛いわ」

あぁ、アタシも手段を選んではいられないようね

・

貴「失礼致します」

嵐「いらっしゃい」

学校から帰って来てすぐ、アタシはAちゃんを自室に呼び出した

嵐「あのね、Aちゃん」

貴「はい」

嵐「……ずっと、アタシの側を離れないでほしいの」

貴「私はいつでも、嵐様のお側にいますが」

分かっていないみたいね

嵐「そうじゃなくて」

アタシは、静かに彼女を壁に追いやる

そして、Aちゃんの顔の横に手を着いた瞬間

「俺と付き合おうってこと」

耳元で、少し低めの声で囁く

貴「っ……嵐様こそ、私の側を離れないで下さいね……？」

遠慮がちに、アタシを見上げるAちゃん

オレンジの光が差し込む部屋で、二人の影が重なった