022.間に合う ページ23
.
顔真っ赤にしてる麻生が可愛くてヘラヘラ笑っていると、麻生はやりづらそうに「…飲みもん買ってくるけど、なんかいる」と言いながら立ち上がる。
「牛乳」
「お前は成長期の子供かよ」
「胸育のためにずっと飲んでんだよ察しろよ」
「わりぃ」
真顔で謝った麻生に小銭を渡そうとすれば「いいって」と軽く断られてすぐに教室を出て言った。
一人きりになった教室は妙に広くて、私は小さい声で狙い撃ちを歌いながら外ではしゃぐ生徒たちを見つめる。
足をプラプラさせながらごろりと机の上に寝転がると、後ろの方で気配を感じてちらりとそちらを見れば監督が真顔でこちらを見ていた。
「…は！？」
「…杉本、お前1人で何やって…」
「いや！何やってるんだはこっちのセリフです監督！！！」
「出張は！？え！？幻覚！？」と勢いよく起き上がってテンパる私に「終わってすぐに帰ってきたら、後夜祭だけ間に合った」と珍しくしているネクタイを少しだけ緩めた。
「……」
「亮介に、前園と麻生のクラスの教室に急いで行けって言われたから、何かと思ってきて見れば」
「…かっ監督！」
私は乱れた制服をちゃちゃっと整えると、「い、一緒に花火、見れますか」と監督を見つめる。
亮介さんに「急いで」なんて言われたからなのか、少しだけ乱れた髪を片手でかきあげて直すと、ゆっくり教室の中へ入ってきたて、私の隣の椅子を引いて座った。
「神は私を見放してなかったー！！」
「…うるさいぞ杉本」
「はい！すみません！」
一気に浮かれモード。
私は窓辺に近づくと「何気に眺めがいいんです！ベストスポットですから！きっと多分もうすぐ上がると思います！」と笑った。
「あの辺の山のあたりからですかねぇ…」
「杉本」
「……はい」
「………最後の文化祭、楽しかったか？」
いつもと変わらない声色。
強面でサングラスで体が大きくて声も低くて、ぱっと見怯えてしまうぐらいの存在感。
でも、監督は優しさを心の奥底にちゃんと持ってる人だ。
今の言葉だって、いつもと変わらない声色だけど、勝手に優しく聞こえてしまうのは、私の耳にフィルターがかかってるからかな。
「…はい！とっても！」
「…よかったな」
「最後に監督が来てくれるなんて、私もう夢のようです」
「肩、揉みましょうか！？出張お疲れでしょう」と慌てて気を使おうとする。
監督はいつものように真顔で「いらん」とぶった切った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 591人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ジェシー - 続きが読みたいです、、！！作者様もし見ていらっしゃったら是非続きを書いていただきたいです！！！！ (2020年6月19日 3時) (
レス) id: 8f8c74e36c (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか？ (2020年3月28日 2時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
空 - 今更だけど続き読みたいですッ！！ (2019年3月13日 1時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶(プロフ) - 更新はもうしないのでしょうか？していただけるならその日を楽しみに待ってます!!!頑張ってくださいね♪応援しています!!! (2017年4月12日 16時) (レス) id: 07fa8ea693 (このIDを非表示/違反報告)
夏乃実(プロフ) - ちかちゃーん(T_T)いきなり御幸世代終わっちゃってたから心臓止まった…私も考えたくないから多分書けないな(^^;; 麻生が切ないです。。 (2016年12月5日 3時) (レス) id: 753635ea11 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
