参拾弐＊刀解願望お断り ページ33
「何言ってんだよ、薬研！」
「どうしちゃったの？」
厚も乱も、想定外だったようで慌てている。
「…どうして？」
ここは本丸の主として、冷静に彼のことを知ろう。
そう思い、私も薬研に正座で向き合った。
「どうして、刀解してほしいの？」
「逆に聞くが、何で大将は刀解しようとしないんだ」
「え、いや、だって刀解する理由がないし…大した理由もないのに刀解するとか……外道でしょ」
私が間違ってるのか。薬研の思い違いか。
「その外道が俺っち達の大将だったんだ。
今さら何とも思わんさ」
「いや思おう！？クズって呼んでいいんだよ！！
何なら刀で斬ったっていいんだよ！！？」
「大将」
あまりにも腹が立って興奮気味に弾丸の如く言葉を吐いた。
だが、薬研の低く重い声にハッとした。
「俺っちがアンタに何をしたか…覚えてるよな？」
薬研が私にしたこと…。
「…お腹を刺した？」
「そうだ。俺っちは大将の腹を刀で貫いた」
「この刀で」と、自分の刀を私の前に置いた。
そこで、ふと気になったことを聞いてみた。
「本当に、これで貫いたの？」
だとすれば、随分と綺麗だな。
もしこれで貫かれたならば、この刀には血がついているはず…。
拭いた？いや、拭いたとしても綺麗すぎるような気が…。
「そうだよ。薬研は自分の本体で主さんを刺したんだよ」
「そっかぁ…じゃあかなり出血したよね。
なのに刃はこんなにも綺麗」
私の台詞に、薬研がビクリと肩を揺らした。
心の中で確信する。
「私を攻撃したのは…本当にこれ(薬研)？」
「…いや、正確には俺っちじゃない。確かに俺っちが刺したが、大将の腹を裂いたのは"俺っち"じゃない」
薬研は膝の上で拳を握りしめた。
瞬間、手入れ部屋の扉がスパンと切れのいい音を立てて開いた。
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作者名：ヒタリ | 作成日時：2018年8月28日 23時
