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「 A 」


「 ○○くん 」



名前を呼んであげること。

それは何よりも沢山してやろうと思った。
俺は大きな病気にかかった事がなく
救急車に乗り込んだ経験も1回や2回だ。

何をしてあげることが君にとって嬉しい事なのか
悩み着いたものは、会話をすること。
悔いのないように、なんて在り来りな言葉も
今では大切で惜しいものだった。





「 これ、俺の両親から 」


「 まって、お義母さんたち来ていたの? 」


「 2人で過ごして欲しいから、って俺に預けただけだよ 」




母から受け取ったのは、君の好きな
シフォンケーキを甘さ控えめにしたもの。
これを見ると初デートを思い出した。



" お義母さん " その言葉を愛する君に言われるだけで
ああ、幸せだなと感じる。
治療法がないと言われるAの病気を考えれば
もしかしたら数える程しか聞けなくなるのだろか?


______俺の名前も。







「 ○○くん、泣いていいよ 」



「 ……はっ? 」



「 目元、潤んでるの見えちゃった 」



「 潤んでないから 」




いつもそうだった。
告白した時も、手を初めて繋いだ時も
キスをした時も。
君には、適わなかった。





「 花瓶の水、替えてくる 」



「 うん、ありがとう 」




花瓶の水を取り替えることだけ以外に
廊下にでる理由があったなんて
きっと、それすらもお見通しなんだろうな。



ガラ、と無機質な音を立てて
ツンとしていた部屋からの解放を成し遂げる。
変な緊張感から抜け出した為か
溜まっていたものが静かに、白いタイルへと
ポタポタ円形の染みをつくっていった。




「 _俺がこんなに余裕なくて、どうすんの 」





( 病気なんて概念のない世界に、今すぐ君を )

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ちょこ - とてもよかったです! (2020年7月11日 23時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Touka | 作成日時:2019年6月28日 20時

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