オモイデ【東雲朱司】 ページ16
「…お腹空いた。」
一日を大方布団で過ごした朱司は、恐ろしいほど大きな何かの損失と、空腹を感じた。
「まあでも、別に起きたってすることないし…」
そう呟いて自分を納得させる。
「15:30…うん…微妙」
転がっていた時計を握りしめ、時刻を確認。
そろそろ夕方だが、夕飯を食べるにはまだまだ早い。
「コンビニで何か買うか…」
そういえば近頃外に出ていない。
別に特別用事もなかったし、日頃の糧は館の食堂で何とかなる。…そういえば、食堂にもあまり顔を出していない。
朱司は現役不登校のjkだが、片時雨館での人脈が少ないわけではない。
ついさっきの鷹央が例だ。朱司を気遣ってよくご飯を届けてくれるし、真上に住んでいる白(通称ツクさん)は何かにつけて朱司を呼び出すので、毎日を退屈しているということもない。
静かに靴を履いて部屋を出る。
「おや、朱司さん。こんにちは。」
ドアノブから手を放そうとすると、きっちりとスーツを着用し、眼鏡をかけた凛々しい男性に遭遇した。
「あ…小春さん。お久しぶりです。…お仕事は?」
「ええ、今日は早めに切り上げて、丁度今帰ってきたところです。朱司さんはこれからお出かけですか?」
「…あ、コンビニに…」
「そうですか。ではお気をつけて。」
にっこりとほほ笑んだ小春に小さく笑い返し、朱司は階段へ向かった。
「小春さん、やっぱり眼鏡をかけてると抜かりないなあ」
隣の部屋に移住してきた小春は、眼鏡をかけたり外したりすることによって人格を使い分けている。
主に眼鏡をはずしている小春の方がフレンドリーでなじみやすいが、スイッチの入った彼も常にテキパキしていて尊敬する人材だ。
そんなことを考えて階段を降り切ると、食堂が何やら賑やかなのに気付いた。
恐る恐るのぞいてみると、見知らぬ顔が何人か並んでいて、気が引ける。
そのうちの赤い髪の美少女と目が合ったので、短く会釈すると
小走りでその場から離れた。
見たところ中学生ぐらいだろうか。
彼女の顔には、涙の跡があった。
まあ、幼い能力者がわざわざここに入居してきたのなら
それほどの理由がるのだろう。
私にだって、人に触れてほしくない部分くらいある。
『…どなたでしょうか?』
ふと頭に浮かんだ声を振りはらうように、朱司は何度も首を横に振った。
「115円です−」
コンビニの菓子パンコーナーからあんパンを一つ掴んで
会計カウンターに五百円玉を一枚置いた。
「ん〜?あーっ!朱司ちゃ〜ん!」
9人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨読(プロフ) - 更新しました!長い間すみません…!次の方どうぞ〜 (2020年7月19日 20時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
雨読(プロフ) - 更新します。 (2020年7月19日 18時) (レス) id: 10653b224c (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - 更新しました、猫羽ナナシをよろしくおねがいします!! (2020年7月13日 18時) (レス) id: 59631e9c92 (このIDを非表示/違反報告)
サワー(プロフ) - 更新します!!! (2020年7月13日 18時) (レス) id: 59631e9c92 (このIDを非表示/違反報告)
あお@期末終わるまで低浮上(プロフ) - 更新しました、何か変な部分があれば指摘してください…! (2020年7月12日 20時) (レス) id: 91f861d85b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨読 x他7人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hurawaxa/
作成日時:2020年7月5日 12時