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心を乱すのは ページ45

(なんだ?あのばあさん。

確実に俺に気づいていたよな。

入っていいってことか?)

不可解な点はあったが、時間もないので医務室へと滑り込む。

すぐにベットで眠るAが目に入り、ベットの近くの椅子へと腰を下ろす。

「Aさん、顔色は良いみたいですね、ハイ!」

レクターが安心したように話す。

「ああ、そうだな」

短く返事をするとAが苦しそうに唸る。

「A…!」

そっと手を握り名前を呼ぶ。

「…す.....てぃん...ぐ」

苦しそうにするAの口から出たのは俺の名前だった。

「スティング君、僕は外で人が来ないか見張って居ますね、ハイ!」

そう言ってレクターは気を利かせたのか外へと出て行った。

苦しそうに寝息を立てるAに、自分が

してやれることは手を握ることしかなくあの時と同じ無力感が襲う。

「A、俺はここに居る。

お前のために強くなった。

だからあんまがんばりすぎんな。

お前が抱えてるそれ、俺にも少し分けてくれよ」

小さなAの手を両手で包み強く握る。

すると、ピクリとその手に反応があり下へ向いていた視線を戻す。

「スティン…グ?どうしてここに?」

ゆっくりとこちらに顔を向けた彼女は少し驚いた表情で尋ねた。

「心配で見に来た」

そっか、と言って彼女は小さく笑った。

「さっきね、スティングの夢を見ていたの。

小さかったスティング。

強くなったスティング。

…仲間なんていらないって言ったスティング。

どれも本当のあなた。

それでも夢の中のあなたはすごく幸せそうに笑ってた。

なのにどうして今はそんなに哀しそうな顔をしているの?」

俺はそんなに哀しそうな顔をしていたのだろうか。

「俺が哀しそうな顔、か。

だとしたらそれはAの所為だよ」

「私の、所為?」

「そう。俺の心を乱すのはいつもAだけだけだから」

相変わらず分かってなさそうな表情のA。

「本当は今すぐめちゃくちゃにしてやりたいけど

生憎時間もないし、怪我人襲う趣味もないから今日はこれぐらいで我慢しといてやる」

そう言って、ベットへ手をつき前屈みになる。

前髪を優しく撫でておでこを出すとちゅっと短い音を立てキスしてやった。

「はは、これくらいで赤くなってんなよ?

今度はもっとすごいことしてやっから楽しみにしとけ」

と残して出口へと向かう。

ようやく我に返ったAが怒鳴ってきたので

早く直せよとだけ言って医務室を後にした。

(あー。俺、我慢強いなあ)

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秘穏(プロフ) - とても面白いです!スティングの心情がなんか可愛らしくて、ついつい見守っている気分になります笑 あと隠密の回ですが、ラミアスケールだけ片仮名でしたが、漢字だと、「蛇姫の鱗」と書きます。 (2019年9月23日 11時) (レス) id: 3c447ef1a9 (このIDを非表示/違反報告)
Da.Li(プロフ) - 大好きです。また更新してほしいです…気長に待ってます! (2018年12月20日 19時) (レス) id: 9339fc5d80 (このIDを非表示/違反報告)
ZIN - 更新されてる!!楽しみに待ってます!! (2018年6月3日 21時) (レス) id: af655f0d36 (このIDを非表示/違反報告)
Pinky* - すっごいおもしろいです!!これからも頑張って下さい(*^O^*) (2018年1月15日 17時) (レス) id: e284ecfae9 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん(プロフ) - あんずさん» わあああ(T_T)最近更新が滞っていたのですがそんなコメントいただけてとても嬉しいです(;_;)プライベートが落ち着いたらまた更新しますのでもう少しお待ちください(T_T) (2015年12月31日 19時) (レス) id: 6c22e6ae36 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あーちゃん | 作成日時:2015年8月28日 8時

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