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もどかしいこの距離 ページ44

試合が終わったあとすぐにAは医務室へと運ばれた。

(くっそ。Aは大丈夫なのか)

Aの事が気がかりでそわそわと落ち着かない。

「スティング様、、、」

ユキノが何か言ったが聞こえない振りをした。

俺はこの状況に苛ついていた。

今すぐAの元へと行きたいのに空っぽの妖精の尻尾の待機席は

Aのところに全員で付き添っていることを物語っていた。

(これじゃあAに会いに行けねぇ)

余計ないざこざはきっとAは好まないだろうと考え

じっと自分たちの待機席で妖精に尻尾たちの帰りを待っていた。

「スティング、苛つき過ぎだ。

お前が苛立ったところで何も変わらない。

すぐにAの元へは行けない。

だったら少しは落ち着いて観戦に集中したらどうだ」

ローグの言うことはよく分かる。

(頭では分かってても俺はお前と違って心まで冷静でいられねんだよ)

「ちっ」

そう思ったがカッコ悪すぎて口には出せず、舌打ちを一つして視線を反らす。

(こんな水着の女共観てなんになるってんだよ。

Aが出るってんなら話は別だけどよ。

あー、妖精の尻尾の奴らは何やってんだよ。

自分のギルドの奴の試合始まってんだろ。

早く戻ってこいよ)

「あっ!スティング君!

妖精の尻尾たちが待機席に帰ってきましたよ!」

悶々とAの水着姿なんかを想像していると

レクターの声が現実へと引き戻す。

そしてそのままレクターを抱え医務室へ向かおうと立ち上がる。

「ちょっと便所」

それだけ言うとローグは呆れた顔して見送ってくれた。

「早めに戻れよ」

ローグに感謝しつつ医務室へと急ぐ。

「Aさん、大丈夫ですかねぇ?」

レクターも心配そうに俺を見上げる。

「わからねぇ。あいつ、無茶しやがって」

焦る気持ちを抑えてようやく医務室のドアまでやって来た。

ドアノブに手をかけたが誰か、人の気配がする。

そしてその気配はこちらに向かって近づいてくる。

(まずい!)

咄嗟に曲がり角の壁へと身を隠す。

中から出てきたのはばあさんとネコだった。

(気づかれたか?)

チラッとこちらを見たばあさんに焦りが募る。

「シャルル、あんたももう戻りな。

ここはあたし1人で充分だから。

あたしは足りなくなった飲み物なんかを調達して15分後くらいには戻るよ」

そう、わざと大きな声で話してもう一度こちらに

視線を送ったそのばあさんは俺の隠れる方向とは反対側へと歩いて行った。

心を乱すのは→←私を呼ぶのは誰



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秘穏(プロフ) - とても面白いです!スティングの心情がなんか可愛らしくて、ついつい見守っている気分になります笑 あと隠密の回ですが、ラミアスケールだけ片仮名でしたが、漢字だと、「蛇姫の鱗」と書きます。 (2019年9月23日 11時) (レス) id: 3c447ef1a9 (このIDを非表示/違反報告)
Da.Li(プロフ) - 大好きです。また更新してほしいです…気長に待ってます! (2018年12月20日 19時) (レス) id: 9339fc5d80 (このIDを非表示/違反報告)
ZIN - 更新されてる!!楽しみに待ってます!! (2018年6月3日 21時) (レス) id: af655f0d36 (このIDを非表示/違反報告)
Pinky* - すっごいおもしろいです!!これからも頑張って下さい(*^O^*) (2018年1月15日 17時) (レス) id: e284ecfae9 (このIDを非表示/違反報告)
あーちゃん(プロフ) - あんずさん» わあああ(T_T)最近更新が滞っていたのですがそんなコメントいただけてとても嬉しいです(;_;)プライベートが落ち着いたらまた更新しますのでもう少しお待ちください(T_T) (2015年12月31日 19時) (レス) id: 6c22e6ae36 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あーちゃん | 作成日時:2015年8月28日 8時

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