020 逃げたのは誰。 ページ20
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『口ばっかりで何も出来なかったくせに!』
俺の言葉が君を貫いた。
『守りたいだとか、気持ちだけで何か変えられる訳ない!
変えたいなら何かするしかないんだよ!!』
鋭い刃物の様に君に突き刺さり、心臓を抉る。
悲しげに揺れるAの瞳が今も尚、焼き付いて離れない。
練習に没頭する様になったのは『王さま』からとある事を言われてからだった。
練習どころか、学校にも顔を見せなくなったれおくんの家に俺は放課後、通っていた。
負けから逃げる様に1人の世界に閉じ篭るなんて馬鹿だなぁ、と俺はそんな風に彼の事を思っていた。
最初の内はれおくんは俺にすら顔を見せてくれなかった。
だけど通う内に顔も見せないれおくんに苛立ちが募り、俺はれおくんの部屋に乗り込んだ。
妹ちゃんも俺にれおくんを助けて欲しいと頼んでいたし、止められはしなかった。
俺は怒りのままに扉を強く叩き続けた。
｢いつまでうじうじしてるわけ?!
負けたからって、あんたの夢がなくなるわけじゃないでしょ?!｣
扉を叩く音と俺の声が被さり、れおくんに声が届いているかなんて俺はどうでも良かった。
突然、苛立ちを吐き出そうと続ける俺の声に被せるように、中から大きな物音が響いた。
ぎょっとした俺は反射的に扉を叩くのも、叫ぶのもやめた。
中から聞こえたのは掠れた、弱々しいれおくんの声で。
｢……俺はもう何も描けない｣
初めてそんな声を聞いた。
｢描けば描くほど全部黒く、醜く、汚れてくんだよ…!｣
その声は震えていて、縋る様な悲痛な声。
｢歪んだ俺の世界じゃ何も創れないんだよ!!｣
ダンッ、と大きな音とれおくんが叫ぶ。
俺は何も言えなくて、ただきつく唇を噛み締めた。
ふと、俯く俺の耳に、がちゃりと静かに扉が開く音がした。
目の前の扉の隙間からはれおくんの顔が覗いていて、やつれた様なそんな姿に心臓がきゅっと縮んだ。
｢……セナ、そんな顔するなよ、綺麗な顔が台無しだぞ｣
はは、と弱々しくれおくんが笑う。
そしてぐしゃぐしゃに皺が寄った楽譜を俺に押し付けてきた。
｢……今の俺が唯一完成させられた曲だ。
醜くて、下手くそで、幼稚な聴いてられないくらい酷い曲だけど
……でも、俺からお前らへの最後の曲だ
Knightsを頼んだぞ、セナ｣
悲しげに笑うれおくんを見ていられなくて、
俺はれおくんから逃げた。
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とまと。(プロフ) - はるなさん» そう言って頂ける方と出会う事が出来、感無量です…!私には勿体無い言葉の数々を有難うございます、最後までお付き合いして頂けると嬉しいです。 (2017年5月9日 22時) (
レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» そんな嬉しい言葉を掛けて頂いたのは初めてです…!最後まで感動して頂けるように頑張ります。 (2017年5月9日 22時) (レス) id: 5b7907730c (このIDを非表示/違反報告)
はるな(プロフ) - この物語、本当に好きです！このお話と出会えて良かった！続き楽しみにしています。頑張ってください!! (2017年5月8日 23時) (レス) id: 651f5172c0 (このIDを非表示/違反報告)
聖泉 - とまと。さん» 感動しました。このお話を読んでいてよかったです(^^) (2017年5月7日 23時) (レス) id: b0c24886c2 (このIDを非表示/違反報告)
とまと。(プロフ) - 聖泉さん» まだまだ完結まで時間の掛かる2人ですがゆっくり温かい目で見てあげてください…!応援有難うございます(*^^*) (2017年4月15日 14時) (レス) id: efe978ed57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えはら | 作成日時：2016年12月7日 19時
