片思い。〜朔間凛月編〜[1] ページ5
この学院に編入してきて早数ヶ月。
休む間すら惜しみ着実に実績を上げ、プロデューサーとしての手腕も認められるようになった。
最初はみんな遠慮がちに『転校生』と呼んでいたが、今ではあの副会長ですら私のことを名前で呼んでくれる。
「おっ、Aのねぇちゃん!その荷物重そうだから俺が持っていくんだぜ!」
「ありがとう、天満くん。」
素直に感謝を述べ、にこりと微笑を浮かべると彼は頬を赤く染め運ぶ先とは真逆の方向へ走り去った。
笑顔を向けた瞬間、周囲が一斉にざわつく。
「あの笑顔は光だけじゃなくみんなやられるよな、創。」
「ぼっ、僕に向けられた訳じゃないのに照れちゃいます。どうしましょ…友也くん。」
「どうしましょって言われてもなぁ…。」
正直、容姿には自信がある。
流石にモデルと並べば霞んでしまうだろうが、一般人の中ではまずまずと言った立ち位置ではないかと。
仕事もきちんと結果を残さなければ評価はされないが、男だらけで閉鎖的な学科ではこの容姿が結構役に立つのだ。
控えめにお願いすると、余程のことがない限り断られることがない。
一部を除いて。
「なんなの…眠いから話しかけないで。」
朔間凛月。
コイツだけはどうもコントロール出来ない。
それどころか想像以上に口が悪く、素直に言うことを聞いてくれたことが一度もない。
今まで何度キレそうになったことやら。
「今からKnightsとの打ち合わせがあるの。全員参加らしいから起きて。」
「…ウザい。」
2年B組内の空気が瞬時に凍りつく。
皆が集まりフォローしてくれるが、内心それどころじゃない。
用事もなく話しかけているならまだしも、仕事の事だから仕方なく声をかけているのに本当コイツは何様なのだろうか。
「おいおい、凛月…。女の子にウザいは流石にないぞ?ほら起きろ。」
「なぁに…ま〜くん。こんなヤツの味方するの?俺…ぶりっ子とか嫌いなんだけど。」
ぶりっ子…。
まぁ、実際それを売りにして依頼を持ちかけたりしているので、言われても別に文句はない。
実際に女子相手には反感買いそうな言動もあるし。
衣更くんに説得され、何とか起き上がった朔間凛月は気怠そうに教室を後にしたので、その後を邪魔しないよう、そっとついて行った。
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作者名:とーこ | 作成日時:2018年7月14日 21時