片思い。〜南雲鉄虎編〜[4] ページ17
突如口を開いたかと思えば、出てきたものは全くの想定から外れたもので思わず目を丸くする。
『好き?』
それを指すのが自分のことだとは瞬時には理解できなかった。
一呼吸し、改めて言われたことを脳内で繰り返す。
すると自覚した途端に頬が熱を帯び、脈が波打つかのように早くなった。
「俺ずっと好きで…。だから今日Aさんを呼びに行く時も浮かれてたんス。少しでも2人きりでいられるのが嬉しくて。だから走って迎えに行ったら、こんなことに…。」
拙い言葉をひとつひとつ繋げ、心情をこぼす。
それがなんとも不器用な彼らしい台詞で、どの言葉も聞き漏らしたくないと耳を傾けた。
「最低だけど、俺は嬉しかったんス。その…、事故だけどキッ、キスできたから!けど…忘れようなんて言われたら…。俺っ…!ってあぁぁぁ、俺マジ何言ってるんスかね!?」
真剣な眼差しで見つめてきたと思えば、憂を帯びたりと随分忙しい表情の変化。
表情七変化につられるかのように、気と頬が緩み笑みを浮かべた。
そんな心情を察知出来なかったのか、南雲くんは慌てふためく。
「えぇ!?何で笑うんッスか!」
「ん〜あまりにも南雲くんらしい言葉で気が緩んじゃった。」
「その笑顔は反則ッスよ!てか、まさかこんな形で告白することになっちゃうなんて…はぁぁぁぁ。」
頭を抱えしゃがみ込み、悶絶する姿もまた愛おしい。
同じ目線になるよう、私もまたその場にしゃがみ込み南雲くんを見上げた。
少し間を空けて、思ったことを自然と口にする。
「…南雲くんと付き合ったら毎日楽しそうだよね。」
女子高生らしからぬ程、仕事に追われ続け今までは誰も恋愛の対象となることはなかった。
それは、彼に対しても例外ではない。
心に余裕と落ち着きが出来た今、彼のことを思い返してみた。
たまに空回りしてしまったりもするけれど、いつも何事にも真剣な姿が瞼裏に浮かぶ。
「私、今までまともに恋なんてしたことないから、いい彼女になれるかわからないけど…。」
きっかけはどうであれ、差し伸べられた気持ちを離す気にはなれなかった。
ただ、この人と一緒に学園生活を共にしたい。
本心だった。
「よろしくお願いします。」
END
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←片思い。〜南雲鉄虎編〜[3]
13人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とーこ | 作成日時:2018年7月14日 21時