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ベタベタ 12日目 ページ36

「ねえ、あなた誰?」


外を見てくるね、そう言って出て行ったトガちゃんが帰った時に言った言葉。


私は、何を言っているのかわからなかった。


「え?冗談......だよね?」


悪い冗談はやめてよ、そう言ってみてもトガちゃんは私を警戒している。


ずっと隣にいたから、それくらいは分かるんだ。


「私の居場所を奪おうとしているんですか」


そう言いながら、ナイフを取り出す。


ああ、これは本気だな。


私はそう悟った。トガちゃんは、私のことを覚えていない。


恐らく、外に出た時にあの人と遭遇してしまったんだろう。


あの人の“個性”発動条件は、どこでもいいから対象者の体に触れること。


掠っただけで、相手の記憶を探れる。


もちろん限度はあるのだけれど、確か、10分間は記憶を消せるらしい。


私の個性は奪う、だけれどあの人は探って消す、そんな“個性”だ。


大丈夫、冷静に、冷静に。


そう言い聞かせようとしているのに、感情は抑えきれない。


私の一番、大切な人の記憶を消された。


その事実が私の胸に突き刺さる。


お父さんに対する憎悪が溢れてきてしまう。どうしようもなくどす黒い感情。


トガちゃんはそれを感じ取って、ナイフを私に向ける。


「何ですかあなたは」


今まで向けられたことのない、鋭い瞳。


「私はA」


自己紹介をすれば、何か思い出してくれるかも。


そんな淡い期待は「そんな子、知りません」という言葉で打ち砕かれる。


あの人は、本当に嫌らしい。


トガちゃんを狙ったことも、私に関する記憶を消したことも。


恐らくあの人は、見ていると思う。


私の様子を笑い、そしてトガちゃんに攻撃されるのを見て楽しむんだろうな。


危なくなったら止めて、また、私を売るんだろう。


本当、嫌になる。


私は戦闘員じゃなけれど、戦うことは多少ならできる。


しかし、トガちゃんに攻撃なんて出来るわけない。


そういう事も踏まえての、この計画なんだろう。


ふふっ、笑えて来るなあ。


探った情報だけでそこまで計画が立てられるんて。


トガちゃん、ごめんね。


私は心の中でトガちゃんに謝ると、気絶させた。


こういう技術は、昔、先生にやり方を教えてもらったのだ。


私の中では、これは攻撃じゃない。うん、違う。


トガちゃんを綺麗なところに横たわらせ、扉を思い切り開ける。


そこに、お父さんの姿があった。


「やっぱり、いたんだね

 いきなりだけれど、さようなら」


私はお父さんが驚いている隙に額に触り、すべての記憶を奪った。


ありとあらゆる、すべての記憶を。

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鈴蘭(プロフ) - ゆいなさん» コメントありがとうございます!トガちゃんが大好きな方にそう言ってもらえて光栄です! (2020年8月21日 21時) (レス) id: f42ad491f0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - トガちゃん大好きなので最高です!、 (2020年8月15日 23時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭(プロフ) - 月雪桜@歌い手好きさん» コメントありがとうございます!トガちゃんの魅力が伝わっていて安心しました。次回作、何を作るかはわかりませんが読んでくださると嬉しいです! (2018年11月20日 22時) (レス) id: f42ad491f0 (このIDを非表示/違反報告)
月雪桜@歌い手好き(プロフ) - とてもトガちゃんの魅力が表にでていて(ヤンデレ的な意味も含めて)とても良い作品だと思いました!完結おめでとうございます!とても面白かったです。次回作も期待しております! (2018年11月20日 22時) (レス) id: ada51b0201 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鈴蘭 | 作成日時:2018年9月19日 23時

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