18話 ページ20
倉元sideー
小坂班長が亡くなったと聞いて、Aの所に急いで向かった。彼女が1人で泣いている気がして、居ても立っても居られなかった。底抜けに明るい性格だけれど、辛いことを内に溜め込んでしまうタイプだから、今回のこともきっと1人で抱え込んでいるんじゃないだろうか。
案の定、彼女は1人お墓の前で泣き崩れていた。
倉元「A……」
早く、俺が……。そう思ってAに近づこうとした所、誰かに腕を掴まれ引き止められた。
塚「伊東一等。今は、俺に任せてもらえませんか?」
倉元「塚ちゃん…。」
彼の瞳が訴える。今は、俺の出番ではないと。
ーーーそうかもしれない。俺が出ていったところで、彼女にどんな言葉をかければ良いのだろう。だからここは大人しく、塚ちゃんに任せることにした。
倉元「塚ちゃん…Aのこと、頼んだよ。」
塚「はい。任せて下さい。」
塚ちゃんの背中を見送って、成り行きを見守る。あの場にいるのが俺じゃないことは少し悔しいけれど、今必要なのは俺の言葉じゃないから。彼女がまたしっかりと前を向いて歩けるよう…導いてあげてね、塚ちゃん。
ーーーそしてまた、春が来た。俺とA、ハイセと半井君あと木村一等はこの春晴れて昇進をし、上等捜査官となった。Aとの距離は、なんというか……普通?そう、不気味なほど普通なんだ。前のようにあからさまに避けられたりもしなければ、かと言ってストーカーに戻ったわけでもない。だけど、普通に俺に話しかけてくる。今までの異様な距離感に慣れてしまっていたから、はっきり言って今でもどう反応して良いのか分からない。
あ「あ、倉元。おはよう!」
倉元「え?あ、あー…うん、おはよ!」
あ「新生伊東班の調子はどう?」
倉元「んー…まあ、とりあえずなんとかやってるって感じ。Aの方は?」
あ「私もそんな感じ!塚ちゃんに結構助けられてるかなー。」
俺が班長となったように、Aも熊井班の班長として部下を持つようになった。そのせいかもしれない、こんな風な距離感を保つようになったのは。俺はこの距離感がなんとも歯がゆい。Aの気持ちがわからなくて。確かめる、勇気もなくて。……もしかしたら、俺のこともう好きじゃないのかもな、なんて…嫌な想像をしてしまう。
あ「じゃあ私、行くね。」
倉元「あ、うん…。」
今日も俺は、彼女を引き止められなかった。
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茶凛(プロフ) - とっても面白かったです!! くらもっちゃん最高!! (2017年5月30日 6時) (レス) id: dbf487caee (このIDを非表示/違反報告)
歯磨き粉(プロフ) - ありがとうございます!ほぼ自己満の作品ですが、楽しんでいただけて良かったです! (2017年3月10日 8時) (レス) id: 00a43c3125 (このIDを非表示/違反報告)
fuuka2001(プロフ) - 面白かったです! (2017年3月9日 23時) (レス) id: 0e8e4fe47e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:歯磨き粉 | 作成日時:2016年12月19日 13時