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Aside
反対方向へと進む結愛に手を振って、足を前に進める。
結愛は、私の進行方向と反対の方向に家があるのだとか。坂を上がらなければいけないらしいが、明日から夏休みだ、とウキウキしながら坂の上を走っていった。
結愛以外に話す人もいない私は、リュックを背負いなおして歩き始める。
「……ねえ、緒方さん」
名前を後ろから呼ばれた気がして振り返る。
「あ、間宮さん。どうしたの?」
私はあまり関わりたくないんですが。そんな本音は押し殺して答える。
間宮さんが悪い人でないのはわかっているが、間宮さんが私に接触してくるのは大体まふさん関連だ。面倒くさい。
私、まふさんと同居してるだけなんだけど。……あれ、これって“だけ”の範疇じゃないのか。
「一緒に帰らない?」
「……え?」
いや、たいして話したこともないのにどうしてそうなる。
なに、これ。新手のいじめかなにか? 私が人と関わるなんて面倒くさい。そう思っているのをわかってやってる?
……まあ理由はどうであれ、それは出来ない。
私と一緒に帰っちゃったら、まふさんのマンションわかっちゃうじゃん。まふまふリスナーさんにそれはできないって。結愛にも場所は教えていないもんね。
「それは無理かなー……」
理由も説明せずに引き下がってくれるかな。
希望的結果は得られないだろうと確信しつつ、曖昧に答えた。……てか、私をまふさんの同居人だと疑っているんだったら、そこらへん察してほしい。
「あ! 緒方さんの家まで行く気はないよ? 少し寄り道して……お話、したいなって」
「……お話?」
はい修羅場ですかそうですか。
……漫画の読みすぎか、悪い想像ばかりをしてしまう。いや、普通に怪しい感じはするけど。
「緒方さんってこの場所わかる? あのー、駅前抜けたところらへんに踏切があって、そこを左に入っていた場所にある……」
「廃ビル、かな」
「そう! それ、それ。そこに行こう」
へえ、間宮さんもあそこ知ってたんだ。
驚きも若干覚えつつ、納得もする。普段誰も寄り付かないのは、カラオケとかショッピングモールとかが学生のたまり場になっていて、あんなところにたむろする理由がないからだろう。
……わざわざ人通りが少ない場所を選ぶとか、怪しすぎるじゃん。やっぱ修羅場?
「行こう。校門にたむろしてちゃ怒られちゃう」
前に進む間宮さんの後をついていった。……早く家に帰りたいんだけど。
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時