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まふまふside
「……ただいまー……」
明日から夏休み。
僕らのライブも始まる時期で、いつもに増して忙しい。最近家でゆっくり出来ないんだよなぁ、とつくづく思う。
重い体をなんとか動かして、クーラーのよく効いた涼しい部屋に入り込むと息をついた。家の外と中の温度差が激しい。
「……あれ?」
妙な違和感を覚えて、辺りを見回す。
僕が帰ってきても、Aは迎えに出たりなんてしないけれど、妙に静かだった。Aの部屋を覗き込んでみても、誰もいない。
「また寄り道したのかなー」
半ば確信の予想を口にしてみる。
最近は寄り道もしていなかったし、こんな暑い日に寄り道をしたのは予想外だったけれど、ありえない話ではなかった。
……一応、確認しに行こうかな。
スマホを手に取り、立ち上がる。
もう一度あの暑い外に出るだなんて。と怠惰な僕が顔を出したが、まあ仕方がないだろう。玄関前まで来た、いろはとぽてとに「行ってくる」と話しかけて外に出た。
*
向かったのはあの廃ビル。
Aが寄り道をする場所はあそこだともう確信しているし、A自身もあそこ以外に行かないだろう。
学生服が多い最中、まふまふだということがバレないように猫背になりながら通っていく。……フード被っているし、バレてないよね?
「あ……こっちだ」
少しだけ人がまばらになる。
廃ビルへと向かう道は少し荒れたところで、古い建造物や空き地が残っている。東京の中では珍しい、まだ発展途中の場所というわけだ。
ここまでくれば、ほとんどまふまふを知っている人はいない。ホッと一息吐いた。視界を狭めていたフードを取る。
まあ一応の確認だ。
別にわざわざ連れ戻す気なんてないし、ここに居ることが確認できればいい。そう思ってそっと中を覗いたら、そこにはAと……もう一人、誰か居た。
(……誰だろう?)
結愛ちゃんという子だろうか。遊びに来たのだろうか。
でも、なんでこんな場所を選んだのだろう。興味が首をもたげたため、見られないように姿を隠しながら声が聞こえるところまで近づいていった。
和やかとは言えない雰囲気の中で、二人は向き合っている。
そんな中、口を開いたのはAだった。
「……急にこんなところに呼び出して、どうしたの? ……間宮さん」
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時