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「A〜、どうしよ、真面目に無理」
背中をつつかれる感触がして振り返ると、そこには結愛。
机の上に突っ伏して、この世の終わりかとツッこみたくなるような顔をしている。このままだと、置かれている作文用紙まで破り捨てそうな勢いだ。
「なにが無理なの。先生に怒られるよ」
「あんなおばさん先生知らない。創作文なんかいらない」
「でも課題じゃん」
「それを言わないでー……」
いつも跳ねているような結愛のポニーテールは、あからさまに沈んでいる。結愛の気持ちをそのまま現す機能でも付いているんじゃないか、と疑いたくなる様だ。
未だに文どころか題名さえ書けていない結愛の作文用紙を見る。
「結愛、マンガとか好きじゃん。それみたいに完璧王子と平凡女子のラブストーリー的なの書いてれば?」
「マンガと創作文は違うよぉ……」
私たちは今、創作文を書いている。国語の授業で。
ちなみにこの時間内に終わらせなかったら、宿題になるらしいので、みんな必死の形相だ。私も頑張って終わらせる。
「間宮さんもう終わったってよ〜やば、あの人万能過ぎ」
「人と比べるな、過去の自分と比べろ」
「なにその名言的な奴」
笑い混じりに結愛に訊かれる。
こんなことをしている場合ではないけれど、息抜きだ。少しくらいは許してほしい。
「よくわかったね、名言引用したの」
「誰の?」
「byA・緒方」
「Aの言葉じゃありがたみないー」
「ひど」
くだらない会話をして笑い合う。先生に「静かにしなさい」と注意されるのはご愛嬌だ。
……昔だったら、こんな会話出来なかっただろうな。少し感傷に浸る。
「Aはどこまで書いたの?」
「結構書いたよー。……んー、原稿用紙三枚は書いた」
「はや、どんな内容?」
「絶対言わないけどね」
「えー、教えてよー」とねだる結愛は放っておいて、シャーペンの芯を出すと再び書き始める。……もうすぐ四枚目いくな。十枚に入りきるかな。
創作文を書くと聞いて衝動で書き始めたけれど、少し軽率かもしれない。でも、これが一番良い方法だと思ったんだ。
…………過去を忘れる、そんなことは出来るわけがないから。
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時