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まふまふside
学校が始まってから一週間。
Aは学校に馴染めているのか。その答えをイエスかノーで表したらイエスだ。
結愛ちゃん、という子とは最早呼び捨てで呼び合う仲らしい。おそらく、今のところ一番仲がいい子。まふまふリスナーという点については心配だが、そこまで疑っている風でもないらしいから大丈夫だろう。
学級委員長の子は、かなりのまふまふリスナーらしいけれど、今のところ接点はなし。うん、きっと大丈夫。
「あー、早く家に帰りたいー」
Aについて考えることで気を紛らわしていたが、そろそろ限界だ。
仕事だから仕方ないとはわかっているけれど、早く家に帰りたい。家に帰ってAに会いたい。この時間なら家に帰っているはず。
後少しで仕事は終わりだ、頑張れ僕。
「ありがとうございました」
まふまふの会社員さんに仕事終わりの一礼をすると、マンションへと足を進める。
早く家に帰りたい。家に帰ってAに会いたい。願望をもう一度呟く。あれ、僕って思ったよりAに依存してたりする?
「ただいまー」
ドアを開けて部屋にはいると、いろはたちが寄ってくる。撫でながらリビングに足を運ぶと、Aはそこにはいなかった。
自分の部屋に居るのかな。さっきより少し大きな声で「ただいまー」と言ってみる。……反応がないことに、ぞっとした。
「A?」
いない、どこにもいない。
物音は一切しないし、家にある生き物の気配はいろはたちだけ。震える足を抑える。
「どこ、行ったの?」
友だちと遊びにでも行った? ううん、あの子はどちらかといえばインドアだ。それにここらの地理もあまり知らないはず。知っているところといえば―――。
*
「あ……」
廃ビルに行けば、居た。
ちょうど陰になる場所に入り込み、船をこいでいる。初めて会ったときに、寝ると言って滑り込んだ場所とおんなじだ。
「……あれ? まふさん、どうしたんですか?」
うたたねしていたAが顔を上げ、僕を認識する。少しも慌ててはいない。Aにとって、自分がここにいるということがバレても、問題ないのだろう。
……つまり、飛び降りをしようとしたわけではない。
安心感に包まれると同時に、疑問が首をもたげる。
「どうして、ここに居るの?」
「少し眠くなっちゃったので、寝に来たんですよ」
ゆるりと微笑み返す彼女に、恐怖を覚えた。
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時