【まふまふ】屋上から飛び降りようとしたら、下の人と目があった。

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≪もしもし？≫



まふさんがスピーカーにしてくれたのか、私にもしっかりとそらるさんの声が聞こえる。



「そらるさん、Aちゃんの名前が決まりません！」



あれ、それだけじゃ伝わらなくない？ と思ったのも束の間。ちゃんとそらるさんは理解していたみたいだ。どうやら、今はちょうど私たちのキャスを聞くために待機していたところらしい。



≪えー、本名でよくない？≫

「……え？」



思わず声が漏れてしまう。

あれ、ネット上で本名を出すのは危険なんじゃなかったっけ。



≪逆に、本名を偽名だって言い切っちゃえばいいんじゃない？ まさか本名公開する、だなんて考えつかないと思うし≫

「……大丈夫ですかね？」

≪まだAは警察の庇護下にあるんだから大丈夫でしょ≫



そういえばそうだ。

私の生活居住区はまふさんの家にあるが、未だに私の両親は行方不明のまま。警察が引き取るのが筋らしかったので、まふさんの家に居るとしても、私は警察の庇護下にあるといえる。



「……じゃあもう、それでいっか」



半分諦めたようにまふさんが口にする。

ただいま十七時五十八分。あと二分で、キャスの始まりだ。



＊



結論から言おう。キャスは大成功。

といっても、私には通常のキャスなんてものはわからないから、あくまでまふさんからの情報を集計した結果の結論だが。


とにかく反応が良かった。

急に有名人が学生を引き取ります！ だなんてファンの暴走必至だと思っていたが、それは私の偏見だったらしい。

流れていたコメントを見る限り、ほとんどの人が好意的な文章を残していた。まあ年の差からして、絶対に恋愛関係に発展しない、と断言しただからだろうか。



「Aちゃん、もう寝てくる？」

「はい……ありがとうございます」



やっぱり世の中には優しい人が多いんだなぁ、なんて思いながら眠りについた。



＊



「もしもし。……そらるさん、起きてます？」

≪うん。キャス大成功だったね。思ったより炎上しなさそう≫

「僕、思ったんですけど……。それ、Aちゃんの態度が良かったんじゃないかなって」

≪どういうこと？≫

「終始敬語で、どこか距離を保っている風だったんですよね。……炎上しなさそうなのはいいけど……やっぱり、もう少し打ち解けてほしいです」

≪……まあ、少しずつ距離を近づけていくしかないと思う≫

「そうですね。……おやすみなさい、そらるさん」



＊

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