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僕とAちゃんが、そらるさんとネットの凄さについて意識を飛ばしていると、そらるさんが長々とため息を吐いた。
「で、本題はこれから」
「Aちゃんをどうするか……ですね」
ゴクリと息をのむ。
今のところ、何をすればいいのか全くの未定。情報は一応手に入れたけれど、そこからなにか解決案が見つかるなんてことは起きない。
「あと、俺らの置かれている状況ね」
「え? なにか不安要素でもありました?」
まあ歌い手である僕らと一緒にいるならば、当然危険性はあるかもしれないけれど、それはとっくに承知している。
そらるさんも同じだと思う。少なくとも、僕の頭では他に不安要素は思いつかない。
「あのさ、この状態って傍目から見たら誘拐だから」
「確かにそれはそうですね」
得心したようにAちゃんが頷く。
本人は気にしてないのに。なんて思うが、確かに世間的に行方不明のままの人―――しかも学生―――が僕らの家にいる、だなんて誘拐以外の何ものでもない。
「えー、これって保護になりません? 実際、飛び降りしようとしていたとこを止めたわけですし」
「それ世間的に知られてないじゃん。つまり今誘拐中」
そっかぁ、僕は知らないうちに誘拐犯になっていたのかぁ。ぼんやりと頭の中で考える。……あれ、この状況結構ヤバくない?
結構勢いでAちゃんを家に連れてきてしまった感は……うん、ある。誘拐犯かと言われれば……誘拐犯、かもしれない。
待って結構今の状況ヤバい。
「つまり解決方法は……?」
「あるっちゃある、けど……」
そらるさんはチラリとAちゃんを見る。なにか言いにくいことなのだろうか。
「手っ取り早いのは、警察行って事情説明だね」
「あー……」
今まで頑なに警察へ行くことを拒否していたAちゃんにしてみれば、悲報のはずだ。
けれど、これ以外に解決方法がないというのが現状で……。
「……別に、いいですよ。警察に行っても」
「え!?」
「元々、警察に行ったら自死を止められてしまうかも、と思った上での拒否ですので。……もうここまで来たら、警察に行こうが行くまいが同じ気がします」
Aちゃんはジト目でこちらを見る。……僕としてはあれ以外に選択肢がなかったんだから、仕方ない、本当に。
誰に向かってしている言い訳なのもわからないまま、頭の中で考えを巡らせる。
ようやく正気に返ったころには、警察へ向かうことに決まっていた。
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千々(プロフ) - ちょこさん» ありがとうございます!その後話も気になりますが、これ以上書き足すと蛇足になってしまいそうだったので…笑 たぶん夢主ちゃんは幸せに暮らしていると思います。想像の中でお楽しみいただけると幸いです! (2022年12月6日 19時) (レス) id: 1d9d509371 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2021年10月13日 22時) (レス) @page38 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - いちごあめさん» コメントありがとうございます! この題名は中々インパクトありますよね笑。あわああ他の作品も見ていただけるんですか、ありがとうございます! (2020年11月1日 14時) (レス) id: 4401622583 (このIDを非表示/違反報告)
いちごあめ - 完結おめでとうございます〜!!題名に釣られたんですけど目に入って本当に良かったなぁって感じてます、笑 他の作品も見させて頂きます( *´ワ`*) (2020年8月26日 21時) (レス) id: 6feff1c97c (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ひきねこさん» ありがとうございます! 時間があったら他の作品も読んでいただけるんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 次作も一生懸命頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします! (2020年8月18日 22時) (レス) id: b78eeb1902 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千々 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/tidierika2/
作成日時:2020年7月4日 16時