十人十色【黒バス】【短編集】

きっと気のせい。【宮地清志】 ページ15

Aside

あ「はい、どうぞ！」

　今日は2月14日。
　つまり、バレンタインデーである。

　部活後、みんなにチョコを渡すと、早速食べて、口々に感想を言ってくれる。

　高尾君なんて、すっごく褒めてくれた。



　でも...

　宮地先輩はまだ部活に来ていない。
いつもは初めに来るのに珍しい。

　今日こそ、って思ってたのに...

　だんだんドキドキしてくる。

あ「あの、宮地先輩はまだですよね？」

大「あぁアイツまだ来てないのか。」

木「今頃呼び出されてチョコでも貰ってるんじゃねーの。」

　木村先輩の一言にドキッとする。

　そりゃそうだ。
　あんなにかっこよくて、頭もよくて、そのうえバスケまでできるときたら
　そりゃモテるに決まってる。

　チョコだってきっといろんな人からもらうはず。

　そう考えると、急に私の持ってるチョコが、幼稚で、場違いに思えてきてしまう。

大「大方そんなとこだろうな。
　 そういえば高尾――――」

高「あ、オレはもう――――」

緑「――――なのだよ」

　高尾君と緑間君のいつも通りの会話だって、どこか遠くに聞こえる。



木「...それにしても宮地遅いな。」

あ「あの、私呼んできます。」

大「そうだな。じゃあ頼む。」

あ「はい！」

　返事をして体育館を出る。

　ふと見た高尾くんがどこか切なそうな顔をしてたのはきっと気のせい。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊


あ「宮地先輩！」

　やっと先輩を見つけて嬉しくなる。

宮「ん？あぁAか。どうした？」


　え。

あ「先輩がなかなか来ないので呼びに来ました。」

宮「おぅ、サンキュ。」

　え。

　おかしい。

　こんなの、いつもの先輩じゃない。

　いつもなら暴言の１つや２つ吐くはずなのに。

　何で...？




　その疑問は――――

　

あ「あの、先輩。これ...どうぞ。」

　精いっぱいの勇気を振り絞ってチョコをさしだす。

　ブルブルと腕が震えて、チョコさえも重く感じる。

　嫌だ。もう逃げだしたい。

　そう思ったその時だった。



　宮地先輩の声と同時に手からチョコの重みがなくなる。

宮「A、ありがとな。」



(...先輩の頬が紅潮して見えたのも、)

(...ポケットが膨らんで見えたのも、)

(...いつもより優しかったのも、)


(...きっと気のせい。)

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