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誰もいない、動物さえもいないしんとした街。 ページ3

「やっぱりな、大丈夫じゃない…」

そこには、予想した通りの小さかった頃の記憶とは全く違う僕の故郷が広がっていた。
綺麗だった街並みはどこにいったやら、この街一帯、焼け野原が広がっている。これでは、どこがどこだかさっぱりわからない。
空は灰色で、今にでも雨が降りそうな雰囲気だがこれは雨雲ではなく、空に漂う化学物質が雲のように見えるだけだ。
“あの”ことが頭に浮かぶ。


――――誰もいない、動物さえもいないしんとした街。




「キャントル、僕の家があったところはどこかな?」

キャントルは人工知能が搭載されており、話しかけると会話をすることが出来る。

「ハイ、A。Aの家があったところはこちらです」


若い女性の声でキャントルは答える。少し発音がおかしい所があるがその声は、はたから聞いたら普通の人間だ。
その声と同時に、画面には街の昔の地図が表示された。

「ここからどう行けばいいの?」

しんとした街に、僕とキャントルの声が響く。

「ハイ、A。案内を開始します。そのまま直進してください」

「りょーかい」

こうして、キャントルに道案内が始まった。
故郷なのに、道案内をさせるなんておかしな話だ。

この街がこんなに変わってしまったのは、“アレ”があったからだ。
そうだ。“アレ”さえなければこの街は変わらなかった。


3月の少し暖かい風が、僕の頬を撫でる。ちょっとくすぐったい。
ずさ、ずさ。焼け野原に響く僕の足音。そして、微かに波の遠音が響いている。
ここは港町だ。今向かっているのは山の方。駅は海の方にある。

「A!着きました」

「あっ、え……ここ?」

「ここです」

キャントルと滑稽な会話をするのも無理もない。
だってここは、

「なんもない!!」

何も、何も無かった。
ただただ、代わり映えしない焼け野原が広がっているだけだ。
分かっていたことだが、オーバーなリアクションをしてしまう。

「はぁ…帰るか」

帰っても、特に行く当てなんてないがここにずっといるのも暇だし。

「写真を撮られてはどうです?」

キャントルが何故か僕の言葉をひろい、会話を求める。

「いや、写真撮ってどうすんの!?なんか幽霊とか映りそうだよ!!」


でも、せっかくここに来たんだからなぁ…

「お昼寝しましょう!」

今の時代、人工知能が冗談言うんだよ、おかしいよね。
と、独り言を言おうとしたがまたキャントルに言葉をひろわれそうなので、

「あぁ、うん。寝る」

と言った。

上手く理解できない、複雑な気持ち。→←先輩にもこんなことを言ってしまう馬鹿な人間。


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設定タグ:長谷川みちる , SF , 青春   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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りあ@イラコン運営(プロフ) - 沢紫園さん» ありがとうございます! (2016年6月11日 12時) (レス) id: d722fb9a07 (このIDを非表示/違反報告)
沢紫園 - 素晴らしい小説ですね 今まで読んできた占ツクの中でも一番面白いと感じました どうやったらそんな素晴らしい小説が書けるのですか (2016年6月10日 21時) (レス) id: c06c7da2f0 (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - 二人ともありがとうございました!出来る限り良い作品になるよう、直したり付け加えたりしていきたいと思います! (2016年3月30日 16時) (レス) id: d722fb9a07 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース@大好き。(プロフ) - Q&Aから来ました。とても素敵な作品だと思います、感動しました。私が言える立場ではないのですが、あえて言わせてもらうとしたら、サイドストーリーを入れてみると面白いと思います。あとは、見出しをインパクトあるものにするとか。これからも頑張ってください! (2016年3月30日 15時) (レス) id: 9ce07a50ad (このIDを非表示/違反報告)
ものかきさん(プロフ) - 綺麗なお話でした! 落としどころもよくて、ぎゅきゅっと物語が詰まっていて……。久々にジーンときました! ただ、少し辛口にするなら、もう少し4人のエピソードを増やした方が良かったです。今のままだと、谷風くん達のキャラが掴みにくい所があるので。 (2016年3月30日 13時) (レス) id: 4ffd81dcba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りあ (短編小説制作所) | 作者ホームページ:http://akojunknjcvf.blog.fc2.com/  
作成日時:2016年3月29日 22時

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