転生先が乙女ゲームみたいなんだが 2【鬼滅の刃】

第捌拾参話 ページ35

鎌が飛ぶ。
ぐるりと回って飛ぶそれは、まるで前世で見たブーメランを彷彿とさせるものだった。




「妬ましいなぁあ、お前本当にいい男じゃねぇかよ、なあぁ」




宇髄さんが逃げ遅れた人を庇うように立っている。

ついでに私まで庇うように立っているから……少し、申し訳ない気持ちになった。
私も、しっかりしなければ。




「人間庇ってなぁあ、格好つけてなぁあ。
いいなぁ、そいつらにとってお前は命の恩人だよなあ。
さぞや好かれて感謝されることだろうなぁあ」
「……まぁな、俺は派手で華やかな色男だし当然だろ。
女房も三人いるからな」




妓夫太郎の動きが一瞬止まる。
その気持ちはよくわかる、私も初めて聞いた時は思考が停止したものだ。

私の前世では一夫一妻が普通でしたからね。
あの時受けた衝撃はどれほどか。




「お前女房が三人もいるのかよ…ふざけるなよなぁ!!なぁぁぁ!!許せねぇなぁぁ!!」




その瞬間、血の斬撃が飛ぶ。
"血鬼術・飛び血鎌"。
数多の薄い刃のような血の斬撃が私たちへと向けられた。




「野一色!!!」
「……わかってます」




宇髄さんが床を爆破させると同時に地面を蹴り、血の斬撃を刀で受ける。

するりと刀を滑って血が地面に落ち、床を汚す。
視界を赤が占める中、私はその隙間からはっきりと妓夫太郎の姿を捉えた。


一筋縄ではいかない相手。

それはよくわかっている。
私の力がどれほど通用するのかわからないけれど……この場に立っているからには戦わなきゃ。


そしてゆっくりと呼吸を整え…刀を振りかぶった。




「色の呼吸 青色・水流硬波」




至近距離から振るったつもりだが、手応えはない。
宇髄さんのいる一階に着地すれば、妓夫太郎に巻きつく帯が視界に入った。




「……まぁ、一筋縄にはいかねぇわな」
「俺たちは二人で一つだからなあ」




妓夫太郎と堕姫。
二人で一つの上弦の陸。
流石と言うべきか、その強さはひしひしと伝わってくる。


あぁ、本当。
私は何でこんな場所に立っているんだろう。
恐怖に気圧されてしまいそうだった。

………それでも、死にたくなんてないから。
私はぎゅっと刀を握りしめた。

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