転生先が乙女ゲームみたいなんだが 2【鬼滅の刃】

第捌拾弐話 ページ34

新しく出てきた鬼に向かって刀を振るうも、それはいとも簡単に避けられた。
堕姫よりも…反射速度が数十倍は速い。




「泣いたってしょうがねぇからなああ。
頸くらい自分でくっつけろよなぁ、おめぇは本当に頭が足りねぇなあ」




堕姫の頸がくっつく。
出てきたのは堕姫の兄であり上弦の陸、妓夫太郎。

こいつらは…二人で一つの鬼。
まぁ、それを分かっているからと言ってスムーズに倒せるかは別の話だけど。




「顔は火傷か、これなぁあ。
大事にしろ、顔はなあ。せっかく可愛い顔に生まれたんだからなあ」




背を向ける妓夫太郎に向け、宇髄さんが刀を振りかぶる。
しかし易々と避けられ、斬撃が飛ぶ。
斬撃の一部はこちらにも及び、私は刀でそれを受け流した。




「へぇ、やるなぁあ。攻撃止めたなぁあ。
殺す気で斬ったけどなあ、いいなあお前…いいなあ」




宇髄さんの額が切れ、血が伝う。

細々とした見た目とは対照的に本能的に感じる相手の強さ、気圧されそうなほどのプレッシャー。
初めて目にする上弦の鬼に、思わず息を呑んだ。




「お前いいなぁあ、その顔いいなぁあ。
肌もいいなぁ、シミも痣も傷もねぇんだなあ……
肉付きもいいなぁあ、俺は太れねぇんだよなぁ。

上背もあるなぁあ、縦寸が六尺は優に超えてるなぁあ…女にも嘸かし持て囃されるんだろうなぁあ。
もしかして隣の奴もお前の女なのかぁあ？」




冗談でも言わんでくれ。
極めに極めた渾身のポーカーフェイスが崩れそうになったじゃん。
天星さんなら聞いて喜びそうな台詞だが、私はごめんだ。
恋愛対象外です。




「妬ましいなああ、妬ましいなああ。
死んでくれねぇかなぁあ、そりゃあもう苦しい死に方でなぁあ……生きたまま生皮剥がれたり腹を掻っ捌かれたりそれからなぁ……」




想像するだけで寒気がする。
皮剥がれるって何？え、意外と簡単に剥げるもの？
そんなん恐ろしすぎるんですけど。




「お兄ちゃん！コイツらだけじゃないのよ！まだいるの!!
アタシを灼いた奴らも殺してよ絶対！
アタシ一生懸命やってるのに、凄く頑張ってたのよ一人で………!!それなのに皆で邪魔してアタシをいじめたの!!よってたかっていじめたのよォ!!」




……一つ言うならば、そんなのお互い様だ。
目の前の鬼たちはどれだけの人間を葬り去って来たのだろう。それはいじめを通り越して殺人だ。

私たちにも、戦う理由がある。




「……取り立てるぜ、俺はなぁ。
やられた分は必ず取り立てる。
死ぬときグルグル巡らせろ、俺の名は妓夫太郎だからなああ」

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