８.レッテル ページ8
今日は風が強い。教室の窓から、大きくなびいている木々を眺め、そっと息をついた。
ここ数日、教室の中ではずっと一人だ。最近、来栖くんやトモちゃんたちに囲まれて生活していたせいか、一人でいることがひどく寂しく感じる。
ーーー試験が終わったら、どうせまた一人になるのに。明日からは来栖くんは授業に出れると四ノ宮くんから聞いて、ほっとしていた自分がなんだか滑稽で可笑しかった。本当に、つくづく思う。わたしはどこまで諦めが悪いやつなんだろう。
もう一度、小さく溜息をつく。それから、ゆっくりと席に腰を下ろして、鞄から教材を出していると、ふと視線を感じたほうに顔を動かした。作曲家専攻の女の子たちと目が合う。
「ねぇ、聞いた？ Aちゃんと翔くん、幼馴染みなんだって」
「え、翔くんって、あのペアの子？」
「そうそう。なんか、怪しいよね。もしかして、学園長に頼んでペアにしてもらったんじゃない？」
小声ではあるものの、耳にはっきりと突き刺さる言葉に、思わずこぶしを握る。唇をかんで、下を向いた。
「あり得る。それに、あの高坂さんの子どもと組めば、そんな実力なくてもそこそこの評価もらえそうじゃん」
「翔くんって、熱いタイプかと思ってたけど、本当はずるい子なんだ」
耳障りな笑い声が教室に響いた。その甲高い声に、意地の悪そうな笑顔に、カッと頭に血がのぼる。気付くと、席を立っていた。
「ーーーあのさ、」
「えっ...あ、Aちゃん？ ごめん、聞こえて...」
「わたしたち幼馴染みなんかじゃないよ」
「え、？」
「普通に、他人だよ」
そう言って、キョトンとした顔をした女の子たちに笑いかける。納得したように頷くのを見て、安心したのと同時に心の中がもやもやと黒いものに侵食されていく。
ーーー不覚だった。わたしと組んだ人はそういう目で見られてしまうなんて、思ってもみなかった。もしかしたら、わたしと仲良くなった人はみんなそういうレッテルをすでに貼られてしまっているのかもしれない。
わたしという存在そのものが、みんなの努力を握りつぶしてしまう。
血の気が引いた。
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環(プロフ) - ラビットハッチさん» コメントありがとうございます！ 本当ですか！ とっても嬉しいです〜！ こちらこそ、ありがとうございます！！ 励みになります！ (2016年12月19日 3時) (
レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
ラビットハッチ(プロフ) - わー！ずっと待ってた甲斐がありました！すごい環さんの作風が大好きで、更新されるのを今か今かと待ってました！更新ありがとうございます！ (2016年12月19日 1時) (レス) id: 7cb82700e8 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 翔くん大好き！！さん» コメントありがとうございます^ ^ 励みになります！ 更新頑張りますね！！ (2015年7月25日 10時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
翔くん大好き！！ - 面白くてこの作品大好きです！！更新頑張ってください！！ (2015年7月25日 9時) (レス) id: dca90fa2b6 (このIDを非表示/違反報告)
環(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜！！ 更新頑張ります！ (2015年7月14日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：環 | 作成日時：2015年3月10日 0時
