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9.自覚と混乱 ページ9

翔side

「最近、元気なくない?」
「え、俺? 別に元気だけど...」
「あんたの調子なんか聞いてないわよ! Aよ、A!」

渋谷に言われて、そっとAに視線を移してみる。机に1人座っているAは、確かにどこか元気がないような気がした。

「なんか、入学した頃のAに戻ったみたい...」
「入学した頃のあいつ?」
「覚えてないの? いつも1人で、とにかく自分に話しかけるなってオーラが凄かったじゃん」
「そうだったかあ?」

入学して、初めて教室に入ったときの記憶を巡らせる。そうだ、確か俺は、デビューしたはずのあいつが自分の隣の席に座っているのを見たとき、思わず睨んでしまったんだった。あの日から、あいつには、もう会いたくないと思ってた。俺はあいつが大嫌いだった。

そう、大嫌い......

ーー"だった"?

「......は?」
「え、いきなり何よ」
「えっ? いや、別に何でもねーけど...」

思わず、ハッとする。

「...はぁ。さっきまでの威勢はどこいったんだか」
「うるせー! 俺は元気だっつーの!!」
「はいはい」
「なんだよ、その反応はーー...」

渋谷の探るような目。軽くあしらう渋谷をキッと睨もうとしたのに、顔を上げた俺のほうが思わず固まってしまった。

「わ、忘れもの取ってくる。じゃあな!」
「はーい」

わめき散らす俺に向けられた、鋭い渋谷の視線から逃れるように、忘れものを装って、急いでその場を離れる。

我ながら、今のはさすがにわかりやすかったなと思う。少しだけ、羞恥に顔を顰めてから、もう一度さっきの思考に戻ってみた。

"だった"って、なんだ? なんで、過去形なんだよ。じゃあ、今はどうなんだ?

廊下を歩きながら、そう自問自答してみる。もちろん、答えてくれる声なんて聞こえるはずもなく、俺は、とにかく混乱する頭を冷やそうと、そのまま中庭に向かって走り出した。

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(プロフ) - ラビットハッチさん» コメントありがとうございます! 本当ですか! とっても嬉しいです〜! こちらこそ、ありがとうございます!! 励みになります! (2016年12月19日 3時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
ラビットハッチ(プロフ) - わー!ずっと待ってた甲斐がありました!すごい環さんの作風が大好きで、更新されるのを今か今かと待ってました!更新ありがとうございます! (2016年12月19日 1時) (レス) id: 7cb82700e8 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 翔くん大好き!!さん» コメントありがとうございます^ ^ 励みになります! 更新頑張りますね!! (2015年7月25日 10時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)
翔くん大好き!! - 面白くてこの作品大好きです!!更新頑張ってください!! (2015年7月25日 9時) (レス) id: dca90fa2b6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます^ ^ そういっていただけると、すごく嬉しいです〜!! 更新頑張ります! (2015年7月14日 22時) (レス) id: 6bc2673fc1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2015年3月10日 0時

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