第九話 ページ9
しばらく先生のことを考えながらコーヒーを飲んでいた。
自意識過剰だが、多分ステージの上から私のことを見つけてくれ、笑ってくれた。
そう思うと嬉しくてつい赤くなってしまう。
私はこの気持ちを知っている。ただ、気づかなかっただけ。ずっと前から、恋をしていたのだ。
わざわざ住んでいる中王区からシブヤまで出向いて見つかる保証もないのに先生を探した理由。
私はずっとまたあの声であのデタラメで面白い話を直接聞きたいからだと思っていた。
でも違った。
軽い病気で入院していた時、隣の患者さんにお見舞いに来てはデタラメな話をしていた先生。
つまらなそうにベッドに横になっていた私を見て、あなたもよかったら小生たちとお話ししませんか、などと話しかけてくれたのだ。
当時中学生だった私はどんなにデタラメに作られた話でも面白くて笑ってしまった。
すると、先生は
「あなたの笑顔が見れてよかった。初めて会った時は笑わない子だと思いましたから」
と、優しい笑顔で言ったのだ。これは嘘ではないですよ、と付け加えて。
その瞬間だったのを今でも覚えている。今なら分かる。その時感じたのは憧れだけではなかった。
恋だったのだ。
そして私はその恋に気づけないまま、病院を退院して、普通に生活をして、大学生になって、夢野先生の本を見つけた。
その本を見つけた時、ああ、もう一度会いたいなぁといつもより強く思った。
そして私はPosseになっていた夢野先生を探しにシブヤまで足を運んだのだ。
かと言ってPosseであるということ以外手がかりは無く、ただ奇跡を願ってふらふらするしかなかった私に
「おねーさん!どうしたの?さっきから目的地もなさそうにふらふらしてるけど」
と話しかけてくれたのが乱数さんだったのだ。
驚いた。彼こそが探している夢野先生の加入するPosseのリーダーだったからだ。
私は無我夢中で乱数さんに迫った。
「あの、相談したいことがあるんですけど!」
乱数さんは夢野先生の話だと分かると嫌な顔一つせず、わかった、付いて来て〜というと事務所に案内してくれたのだ。
「ふ〜ん、なるほどね、お姉さんはずっと前から幻太郎に会いたいんだ。ん?あっもう着く頃かも!友達呼んでるんだよね!ごめんね、今日のところはまた今度でいーい?」
「はい、分かりました!すぐおいとまします」
すぐに荷物を持って出口へと走る。
ドンッ
「わっ」
ふと目が合う。
ぶつかったのはずっと探していた夢野先生だった。
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芽月(プロフ) - 結城さん» ありがとうございます!キュンキュンさせることができてよかったです!リクエストありがとうございます、準備でき次第投稿していきますのでよろしくお願います! (2018年8月13日 11時) (レス) id: e23601d3dc (このIDを非表示/違反報告)
結城(プロフ) - 完結お疲れ様でした!個人的に幻太郎が推しでめっちゃキュンキュンしてました(*´∀`*)リクエストで幻太郎が嫉妬する話を読みたいです! (2018年8月12日 22時) (レス) id: ef5937f70b (このIDを非表示/違反報告)
芽月(プロフ) - ぬぬぬさん» 山田兄弟しんどいですよね...あれ、綺麗なジャイアンだと思ってます笑よく聞けば確かに声がジャイアンですもんね笑 (2018年8月12日 17時) (レス) id: ffd8fb249b (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬぬ(プロフ) - ブクロとシブヤ!?一緒です!!これって運めi…((夢野さんと一兄が好きです!だけど一兄の声がジャイアンだと知って… (2018年8月12日 17時) (レス) id: 43acd54f1e (このIDを非表示/違反報告)
芽月(プロフ) - ぬぬぬさん» 私はブクロとシブヤの箱推しです…みんなかっこよくて推しが定まらなくって!ぬぬぬさんは幻太郎推しですか? (2018年8月12日 17時) (レス) id: e23601d3dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芽月 | 作成日時:2018年8月7日 0時