嘘と本物【夢野幻太郎】

第八話 ページ8

バトル終了後、私と友人は出待ちをするためにたくさんの女性に混じって裏口の前に来ていた。


「迷惑じゃないかなぁ...」


私なんかがバトルの後疲れている中会いに行ったらさすがに迷惑そうな顔をするかもしれない。


「大丈夫よー！こんなに人がいるじゃない！憧れなんでしょ、夢野先生？」


「うん...」


でも前の方に行こうとするとたくさんの女性に押されてすぐに戻されてしまう。今の位置は真ん中よりは前の方にいるとは思うけど、これ以上前には...。

帰ろうか迷って、よし、帰ろう、感想は今度会った時に言おう。と思って後ろを向いた時、周りの女性がキャーっと湧いた。

Posseが出て来たようだ。

私がいると分かると迷惑かもしれないからと思い、そのまま帰ろうとすると、後ろから無理矢理紙を握らされた。

私が驚いてすぐ後ろを向くと夢野先生が女性に揉みくちゃにされ、困ったように笑っている姿が見えた。

すぐに人混みから脱け出して紙を広げてみる。


『この後あの喫茶店で待っていてください』


先生の達筆な字でそう書いてあった。

それだけで心がじんわり熱くなって、ドキドキとしてしまう。

ちゃんと今日、直接かっこよかったです、と伝えられる。そう思うとすごく嬉しくなった。

後から人混みから出てきた友人は乱数さんと握手してもらったらしく、満足そうにへにゃんと笑っていた。


友人と別れ、再会した次の日に連れてきてもらった喫茶店に足を向ける。

あの様子だと先生は遅くなりそうだったのでゆっくり歩を進めた。

喫茶店に着くと、夜ということもあってガラ空きだった。
マスターに300円ほどのコーヒーを一杯頼むと、誰もいないテーブル席に座って夜のシブヤの街を眺めた。

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