前世の記憶を持った異能探偵！ part2

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効いた、か？
目の前の男の表情は、帽子の鍔で隠れてよく見えない。
瀬川はその真意をはかりかね、思わず眉間に皺を寄せる。
そもそも瀬川がわざわざ彼ら自身の目の前でその変装を看破してみせたのには勿論理由がある。言うまでもなく、動揺を誘うためだ。
どんな凶悪な犯罪者でも、手の内を暴かれたときには一瞬だけ隙ができる。そのことを瀬川は経験から学んでいた。

ここに連れてこられるまで、瀬川も勿論逃げようとしなかったわけではなかった。自慢ではないが、瀬川も動きの遅いほうではない。運動神経抜群とまではいわないが、中の上くらいにはあるつもりだ。けれど、それが叶わなかったのは、偏に警官に扮した彼らの挙動にあまりにも隙が無さすぎたためだ。そう、異常といっても差し支えないくらいに。

だが、そこで諦められる瀬川ではない。何しろ前科もち、しかも罪状が殺人罪だなんて舞台復帰どころか芸能界復帰も難しい。たとえそが事実でないとしても、噂が流れた時点でアウト。瀬川が目指すのはそういう業界だから。

しかし、いくら待っても一向にチャンスがくる様子はない。
だから瀬川は自ら隙を作り出すことにした。犯罪者、とまではいかなくとも他人にいえないことを
している連中というのは、多かれ少なかれどこか後ろめたい気持ちを隠しきれないものだから。

さて、目の前の彼らはどんな反応を示すだろう。
本物の警察権力を呼ばれることに恐怖するだろうか。
まずいことになったと自分から視線を切ってくれるだろうか。
何故瀬川がそんなことを知っているのはと問うてくるだろうか。

どれにせよ、自分のすることは変わらない。
ただ、集中の切れた彼らの間をくぐって走りぬけるだけだ・
瀬川は足にそっと力を込め、その時を待つ。

が。
男の反応は、瀬川の望んだどれとも違っていた。
「中々どうして面白い見解だ。…それで？」
降ってきたのは、まるで日常会話の続きを促すかのような気負いのない声だった。

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