前世の記憶を持った異能探偵！ part2

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「やー、体力仕事なんて久しぶりだー…。
あれ、筋肉痛って保険利きましたっけ？利かないと俺の明日が真っ暗すぎてホタルでも集まってきそうなんですがー」

場にそぐわぬ、緊張感の欠片もない声がした。
位置にして公由の後方、中庭中央部。
「ふは、そりゃあ良い。温泉で蛍酒の祝勝会ってのも乙なモンだ…」
「あはは、肴はホタルイカですねー…」
「あァ、それなら天ぷらが良い。いや、敢えて単純に酢味噌でも…」

漏れる弱々しい呻きは生者のものにはほど遠く、しかし悲しいことに理解可能な言語として公由の耳に届いた。

思わず振り返ると、そこにはベンチでぐったりと溶ける現場班の同僚たち。長船と山吹だ。
二人＿いや、二つの屍からは生物が生きているだけで放つ覇気といったものが全くと言っていいほど感じられない。

「な、なにしてるんですか…」
一応問うてみると、返事らしきものがあった。

「おっと、公由の嬢ちゃんか…いやなに、俺ももう25だ。二十歳過ぎるとどうも、身体が重くてなあ…」
「あはは、そもそも人間なんて生まれた時から生命力は低下する一方なんですよー。20年も生きてればもうほぼ0でしょー…」

話を聞く限り、どうやら証拠集めにへばったらしい。
ふう、と小さく吐いた溜息に氷の欠片が混じる。

元来彼女は、どちらかといえばゲームやアニメといったサブカルチャーが好きな内向派女子だ。だから、普通の女の子の公由は人前に立つことも、他人を諫めることもあまり得意ではない。
よって、仕事をさぼる仲間を見ても、見て見ぬ振りをするか、もしくはなにか言おうとしても、しどろもどろになって終わってしまう。普段の彼女なら。

「あ、あの！」

だが。今は違う。今の公由は、たとえ成り行きで巻き込まれたとしても、探偵としての職務中である。

「あ、あんまり私も、こういうこと、言えないんですけど…」

どこにでもいる普通の女の子じゃない。
今の私は、探偵公由冬雪だ。真実を一つでも多く救うために戦う正義の使者。
その頭脳は、能力は、今、仲間を取り戻すために在る。
それなら、今すべきことは。

「せ、瀬川くんを、仲間を、」
散々背を向けてきた。
散々目を背けてきた。
だからもう、逃げないことだ。

「とっ…、取り戻したくないんですか…！」
弱い自分を、乗り越えることだ。

ふり絞った言葉は、みっともなく震えていた。声だけでなく、足も手も、それに口まで。
けれど確かにそれは、探偵公由冬雪の、最初の勝利だった。

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