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193.不思議な湖 ページ43

 祖父に連れてこられたのは

 周囲を木々で覆われたなんとも不思議な湖。

 私はこちらに来てからすぐ、

 一度だけこの湖に来たことがあった。

 杏寿郎に会いたくて、会いたくて…

 月夜に散歩をしていたら辿り着いた場所。

 湖を覗くと紅く淡く光るものが月明かりの水面に揺れて、

 掴もうと湖に手を伸ばした時に中へと落ちてしまった。


 不思議だった。湖に落ちたと思ったのに、

 そこは杏寿郎の布団の中で…幸せな気持ちになった。

 彼は自分の将来の夢について話してくれた。

「この世から鬼を滅すること。

 人々が安心して暮らせる世を作ること。」

「うん。杏寿郎らしいね。必ず叶えられるよ!」

「もうひとつ…

 Aとご飯を食べること。

 共に寝ること。

 並んで桜を見ること。

 あの丘で見た花火をまた君と見ること。

 

 Aと結婚すること。」



「ひとつじゃない…」


 嬉しいと思った。それと同時に叶えてあげられないことに

 胸が押し潰されそうになる。


「俺はこの夢を叶えたい…

 叶えられると言ってはくれないか?」


 できない…できないんだよ、杏寿郎。

 私はあなたの人生をもう通り過ぎてしまった。

 頬を無数の涙が伝っていく。


「叶えたいのだ…」

 彼がこちらに腕を伸ばした時、

 眩しいくらいにあたりが明るくなって、

 気がつくと私は湖畔で寝そべっていた。



 *



「夢は生者と繋がる唯一の場所だ。

 彼は今、下弦の壱の血鬼術にかかり、夢の中にいる。」


「夢の中…」


「奴は幸せな夢を見せて、人の精神の核を破壊する。

 精神の核は無意識領域の中にあり、それを壊されると、

 その人はもう二度と元には戻れない。」

 そんなの…絶対に駄目だ。

「おじいちゃん。私に何ができる?私、杏寿郎を助けたい!

 彼はこんなところで廃人になんてなるべきじゃない!」


 祖父は私の背中を優しく押して、湖を指差した。


「この湖は生者の夢の中と深く繋がっている。

 触れることもできる。

 お前の想いの強さなら、二人の絆の強さなら、

 きっと鬼の血鬼術さえも破ることができる。

 この中に入るんだ。」



「私…この湖に落ちたことがある。」


 祖父は驚いた顔をした。


「そうか。
 
 そうだとしたら…湖に入れるのはこれで最後だ。」




「最後…?」

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 小鈴さん» 感想ありがとうございます!最後までお読みいただき光栄です。物語は読んでもらってこそ生きるものだと私は思うので、この作品を見つけてくださり、そして読んでくださったこと、本当にありがとうございます! (2022年11月15日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。途中からずっと、涙なしでは見られませんでした。この作品の主人公と煉獄さんに出会えて本当に良かったです! (2022年11月14日 22時) (レス) @page50 id: 97399e389e (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 最後までお付き合いいただき、感謝申し上げます。主人公に感情移入し、物語に入ってもらってこそ、この小説の醍醐味と思い作っていたので、大変光栄です!あたたかいコメントにいつも励まされておりました。ありがとうございました! (2022年7月16日 7時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 読了が遅くなりました。お疲れ様でした。長らく愉しませて頂きました。現し世でなくても、ハッピーエンドとは!こういう纏め方もあるのかと感心です。彼女の気持ちに入り込んでいたため、逢いたいけど早いよと涙しました。 (2022年7月15日 16時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!起承転結の「転」は恐らく読者様の予想を超えるものになってしまったかもしれません。しかし、美桜さんのように嬉しいお言葉をいただけると、作者として本当に幸せです♡最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2022年7月10日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年6月12日 13時

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