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194.愛しい人よ ページ44

「前に落ちた時も、

 杏寿郎くんに会ったのだろう?」

 私は黙って頷いた。

「この湖で同じ人の夢へ行けるのは二度しかない。

 大抵の人はこちらに来てからすぐに一度、

 最後は大切な人の死期が迫った時に迎えに行く形だ。

 今お前がここで行けば、杏寿郎くんの最期には…」

「構わない。杏寿郎を助けるためなら…私、行くよ。」

 私の力強い眼差しに、祖父は困ったように笑った。

「分かった。だが忠告しなければならないことがある。」

「何…?」

「鬼の術中にはまっているということを言ってはいけない。

 万が一口にしてしまえば、鬼に気づかれ、

 お前はこちらに戻って来られなくなるだろう。」

「もし戻って来られなくなったら…?」

「魂の消滅だ。この世界からも消えてしまう。」

 祖父の暗い声にごくりと生唾を飲み込む。

「必ず杏寿郎を助けて戻ってきます。」


 恐る恐る湖の中に足を入れて歩いていくと、

 腰あたりまで水に浸かった途端、

 すとんっとどこかへ落ちていった。


 ここは彼の夢の中…

 気がつくと目の前に隊服姿の杏寿郎がいて、

 突然彼を不思議な炎が包んだ。

「杏寿郎!?」

 この気配…鬼の匂い。ああ、あの子ね。

 こちらから見ていたから知っている。

 "鬼の隊士"

 炎が消えると杏寿郎はスッと立ち上がり、私に背を向けた。

 それがとても寂しく、暗い感情が私を支配して、

 思わず彼の隊服の袖を掴んでしまった。

 ぐいっと後ろに引く。

 私も…鬼でも…あなたのそばにいられたのかな?

 あなたと一緒に戦えたかな?

 …いけない。

 私には、"今"の私にしかできないことがあるんだ。
 
「杏寿郎…」

 彼は振り返らない。

 きっとこの夢が鬼によるものだと気づいたんだ。

 あとは私があなたの背中を押すだけ…


 私は黙ったまま俯く杏寿郎の背後から彼の羽織をかけた。


 熱き心を持つ、人々の希望の灯火、炎の羽織。


「あなたは炎柱、煉獄杏寿郎。

 杏寿郎がいるべき場所は…ここではない。

 だから、振り返らずに行って。」

 泣いちゃ駄目なのに…指先が震えて涙ぐむ声。

 杏寿郎は一度だけ振り返ると、

 私の前髪を大きな手で上げた。

 空気に触れ、ひんやりとした額に彼の唇が優しく当たる。

「A、ありがとう。

 またいつか君に会いに行く。必ずだ。

 それまで…さようなら。」


 ありがとう。大好きよ。忘れないで。

 私はいつだってあなたの味方だから。

195.あなたの匂い→←193.不思議な湖



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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 小鈴さん» 感想ありがとうございます!最後までお読みいただき光栄です。物語は読んでもらってこそ生きるものだと私は思うので、この作品を見つけてくださり、そして読んでくださったこと、本当にありがとうございます! (11月15日 18時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
小鈴(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。途中からずっと、涙なしでは見られませんでした。この作品の主人公と煉獄さんに出会えて本当に良かったです! (11月14日 22時) (レス) @page50 id: 97399e389e (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - misakimiさん» 最後までお付き合いいただき、感謝申し上げます。主人公に感情移入し、物語に入ってもらってこそ、この小説の醍醐味と思い作っていたので、大変光栄です!あたたかいコメントにいつも励まされておりました。ありがとうございました! (7月16日 7時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 読了が遅くなりました。お疲れ様でした。長らく愉しませて頂きました。現し世でなくても、ハッピーエンドとは!こういう纏め方もあるのかと感心です。彼女の気持ちに入り込んでいたため、逢いたいけど早いよと涙しました。 (7月15日 16時) (レス) @page50 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます!起承転結の「転」は恐らく読者様の予想を超えるものになってしまったかもしれません。しかし、美桜さんのように嬉しいお言葉をいただけると、作者として本当に幸せです♡最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (7月10日 15時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年6月12日 13時

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