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144.煌めく瞳 ページ44

「わっ…」


 丘へと登っていく道で転びそうになり、

 杏寿郎に抱き止められる。

 辺りはすっかり暗くなっていた。


「…ありがとう。杏寿郎どこまで行くの?」


 杏寿郎の顔を見上げると、

 彼はふわりと微笑んで空を指差した。

 彼の指差す方に目を移すと、突然パッと花が咲くように

 空が明るくなった。



「わあ…!花火だ!」



 秋の夜空に色とりどりの火の花が咲き乱れ、

 風に乗って火薬の匂いが鼻をかすめた。



「こんなに近くで花火を見たのは初めて。」


 私は天に向かって手を伸ばすと、ぎゅと空を掴んだ。


「…花に手が届きそう。」


 私がそう言うと、彼は伸ばした私の手を掴んで

 そのまま自身の胸に当てた。


「…届いた。ずっと離さない。」


 ぐっと引き寄せられると、柔らかい唇が重なった。

 涙が出そうなほど優しく触れる唇は

 心地よくて、愛に溢れていて、私はそっと目を閉じた。




 ドンッと胸に響く花火の音が

 私の鼓動をさらに加速させていく。



 ゆっくりと薄く目を開けると、赤や緑、黄色など

 様々な色に照らされた彼の顔が艶やかに映されて、

 胸の奥の方から湧き上がる熱い感情が私を突き動かす。


 私は彼の着物の袖を掴んで、思いの丈を唇に乗せた。



「んっ…ははっ。可愛いな。」


「恥ずかしい…」



 杏寿郎は私の頬を撫でると顔いっぱいに笑って

「恥ずかしがる君も可愛い。」

 だなんて言うから指の先まで熱くなっていく。



 横から見るような打ち上げ花火は

 下から見上げていたよりも迫力があって、

 今まで見てきたどの花火よりも綺麗だ。

 


「杏寿郎、連れてきてくれてありがとう。」


「うむ。君と見ることができて良かった!

 散歩に出かけた時に村の人から花火のことを聞いたのだ。
 
 今年の夏はお互いに任務で

 花火大会には行けなかったからな。」



 そういえばそうだったなあ…

 

「Aのご両親に結婚を認めてもらえて良かった。

 近々、父にも報告をしようと思う。」


 槇寿郎様…認めてくれるだろうか。

 少しずつ心を開いてはくれているようだけれど、

 結婚となるとまた話は別だよね…


「案ずるな!きっと父上は分かってくれる!」


 いけない…

 不安に思っていることが顔に出ちゃっていたかな。

 私の悪い癖だ。


「そうだね。」



 花火を見上げる彼の瞳には

 幾つもの光が宝石のように輝いていた。
 

 

 

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!夜空に咲く花のシーンは、私自身お気に入りのシーンなので、そう言っていただけて、とても嬉しいです!ありがとうございます。 (2022年6月12日 20時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 夜空に咲く花を背にした二人の情景が浮かぶ綺麗な文章にも癒されました。 (2022年6月12日 18時) (レス) @page44 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - ストレートに伝えて下さる煉獄さんに、またまた癒やされました。本日もご馳走さまでございます! (2022年6月12日 18時) (レス) @page43 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - エリスさん» エリスさん、応援ありがとうございます!ずっと読んでくださっているだなんて感激です♡ 更新の励みになります!ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。 (2022年5月5日 0時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - 第三弾おめでとうございます^ ^こっそりとずっと読んでます(笑)これからも応援してます! (2022年5月4日 23時) (レス) @page12 id: 8779dd4f89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年4月27日 20時

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