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143.内緒で向かったのは ページ43

 私の言葉に目を開く彼、

 とても驚いた顔をしている。


「さっき、散歩と言って行ったのは

 私の亡くなった元婚約者のお墓でしょう?」



「どうして…分かった?」


「杏寿郎の髪についていた金木犀が教えてくれた。

 この村で金木犀が咲いているのは

 彼のお墓がある墓地だけなの。」



 私が微笑んでそう言うと、

「ご明察、恐れ入るな!」

 と、彼は頭をかきながら眉を下げて微笑み返した。



 足元には影が長く伸び始めていた。




「籍を入れるにあたり、

 どうしても彼に挨拶をしたかったのだ。

 だが、君はどう思うかを考えた時、

 俺は一人で行くべきだと思った。」



 なるほど。あの時、父に道を尋ねていたのは

 そういうことだったのか。



「杏寿郎は優しい人だね。心遣い、感謝します。」


「君の見事な推理には勝てなかったな!

 しかし、今となってはそれで良かったのかもしれない。

 実は一人の女性から君への伝言を預かった。」


「伝言…?」



 杏寿郎は目を伏せると、柔らかな表情で語り出した。



「あなたがいつまでも幸せであることを、

 遠くから祈っています…と、一言君に伝えて欲しい

 とのことだった。」



 伝言の送り主は、きっと亡くなった元婚約者の母親だろう。



「その人が誰だかは…」


「うむ。承知している。」


「そっか…

 伝えてくれて、ありがとう。

 その…辛くは…なかった?」


 私は口にした後に、そのようなことを聞くことの方が

 失礼だと気づいた。


 やってしまった…



 杏寿郎は首を振って微笑んだ。


「今のAがいるのは、

 君の家族や関わってきた人がいたからだ!

 だから俺は君に関わった全ての人を愛おしいと思う!

 君の大切な一部なのだから。」



「杏寿郎…」



「Aに黙って行ってしまい、申し訳なかった。」



 そんなことはいいの。



 抱えきれないほどの愛が私の腕からこぼれ落ちて

 私はどうしたらいいのか分からなくなる。



「杏寿郎はどうしてそんなに優しいの?」


 私がそう問うと、彼は不思議そうな顔をして

 さも当然と言うように私に告げた。


「君が好きだから。」


 あまりにもまっすぐな言葉に私が顔を赤らめて俯くと、

 温かい彼の指先が触れて、ぎゅっと手を握られた。



「少し寄り道をしても良いか?」


「いいけど…どこへ?」


「着いてからのお楽しみにしよう。」

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - misakimiさん» misakimiさん、コメントありがとうございます!夜空に咲く花のシーンは、私自身お気に入りのシーンなので、そう言っていただけて、とても嬉しいです!ありがとうございます。 (2022年6月12日 20時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - 夜空に咲く花を背にした二人の情景が浮かぶ綺麗な文章にも癒されました。 (2022年6月12日 18時) (レス) @page44 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
misakimi(プロフ) - ストレートに伝えて下さる煉獄さんに、またまた癒やされました。本日もご馳走さまでございます! (2022年6月12日 18時) (レス) @page43 id: cb1d4026ae (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - エリスさん» エリスさん、応援ありがとうございます!ずっと読んでくださっているだなんて感激です♡ 更新の励みになります!ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。 (2022年5月5日 0時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
エリス(プロフ) - 第三弾おめでとうございます^ ^こっそりとずっと読んでます(笑)これからも応援してます! (2022年5月4日 23時) (レス) @page12 id: 8779dd4f89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年4月27日 20時

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