#思い出 ページ18
『海とかバーベキューとか、俺は勘弁だな……』
「どうして?」
『どうしてってお前……俺がどんな目に遭ったか覚えてるやろ?』
「ふふっ……覚えてる」
『日焼けして真っ赤になってツライわ、海に洋服のまま投げ込まれて溺れかけるわ……ほんっと最低だったんよ』
「プールでもやられてたね」
『なんでアイツら俺ばっか投げるん?』
「……そりゃあ、さぁ……」
『あ、お前、今ロクな事考えなかっただろ!?投げやすそう、とか考えたやろ!?』
「…………」
『せめて何か言えや!!』
ちょっと前までは、どこか私に気を使ってる感じだったさかたんが、以前のさかたんに戻ってる感じがして。
何気ない会話が出来てるのが嬉しくなって、さかたんの調子に合わせてたんだけど……。
この、何とも言えない不安は。
何なんだろう。
『そうそう、あのさ?』
「……ん?」
『お前んち、どの辺?』
「……へ?」
『いや、センラに聞いても大体の場所しか知らんって言うからさ……今、川に架かってる橋、渡ってんだけど』
さかたの最寄り駅と、私の最寄り駅の間に大きな川が流れていて。
以前、試しに自転車で渡ってみた事があるんだけど……とんでもなく疲れて、もう二度としない!って思った事が脳裏を過る。
「え!?なんで!?」
『え、自転車で』
「いやいや!!そうじゃなくて!!」
『だって電車終わってるし』
その「なんで」は、その「なんで」じゃなくて……何の用事が私の家に?っていう意味であって……。
しかも外で動くの嫌いなさかたんが、あの橋を自転車……あんな長い橋を?わざわざ?
『いいから、ホラ!言う!』
「あぁ……えっと……」
『橋、渡り終わったらどっち?』
「えっと……最初の大きい交差点を右に渡って……そのまま通り沿いに真っ直ぐ……」
私が動揺したままなのに、さかたんは飄々と私にナビをさせて。
途中でコンビニに寄るから……って、通話はそのままにして好きなアイスとか聞かれて。
晩酌が済んだか聞かれたから、まだだって答えれば……私の好きな銘柄のビールも買ってくれて。
コンビニを出て自転車に再び跨ったらしいさかたんは、鼻歌なんかを始めちゃう位にゴキゲンで。
「途中まで行く」
説明しながらサンダルを引っ掛けて。
慌てて自分の部屋を飛び出した。
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