#いつだって ページ23
事あるごとに。
脳裏を過る言葉。
『かかっといてよ、呪い』
本人がいなくなってからも。
本当にかかってしまったみたいに。
次の年は、雨が降った。
『逃げないん?』
その次の年。
せっかく素敵な人に告白されたのに。
その誘いを断ってしまう私を笑うみたいに、天の川は雲に遮られてた。
『まぁ……逃がしませんけどね』
その次の年。
就職してやっと仕事に慣れてきて。
ビアガーデンで飲むと酔いが早く回ると知ったら、雨に降られた。
『呪い、かけに来たって言ったでしょ』
その次の年。
素敵だな、って思った会社の先輩に彼の面影が見えて。
やっぱ呪いかかってんじゃん……なんて思う私の頭上は雲で埋まっていた。
『……A、かわいい』
毎年、毎年。
日付を見る度に、勝手に彼の声をリピートしだす私の頭は、バカになっちゃってるんじゃないかと思う。
「…………はぁ」
ヒールをカツカツ鳴らしながら慌てて終電に飛び乗って、揺れる車内から見える外の景色も見慣れて……。
それ位の時間が経ってるのに、未だに同じ部屋に住み続けてる私は、やっぱり呪われている。
最寄り駅に着いて、大通り沿いに真っ直ぐ歩いて、いつも立ち寄るコンビニで思い出すのは……チョココーヒー味のアイスといつも買ってたビール。
思い出して悲しくなるから、どっちも買えなくなったよ、バカ。
でも、今日は天気が良いから。
きっと織姫も彦星に逢えてるから。
お祝いに買ってみようかな。
手に提げてるビニール袋には、あの時さかたんが買ってくれたのと同じ銘柄のアイスとビール。
雑に冷蔵庫と冷凍庫に放り込んで。
サッパリしてからビールを飲みたくて、さっとシャワーを浴びて部屋着に替えて。
ビール片手にベランダに出て空を見上げたら、綺麗な星空が広がってた。
せっかくだから、せめて彼が幸せであれ……なんて、祈ってみようかな。
プシュ……とプルタブを上げた時。
ブルブルとスマホの震える音がして。
画面に表示されたのは、久しく会ってない相手の名前で……私はそのまま通話を押して、スマホを耳に当てた。
「もしもし、センラさん?久しぶり」
スマホの向こう側からは、何の返事もなくて……意味が分からず、私は首を傾げた。
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