34話 その3 ページ44
「離せ!離せ!!」
ジタバタと無様に暴れまわるチャイの手から刃物を取り上げた主人は息一つ乱していない。
要するにそれだけの力の差があるのだ。
「黄牙の民が我が軍下に降ったのは知っているだろう?黄牙の民は白瑛様の名の元、その身の安全を保障された。家族に会いたければ会いに行けばいい。お前は、もう、奴れいではないのだ。」
会いに行けばいい?
「お前のご家族も元気に暮らしていることだろう。我が家に仕えるのを辞めたければ辞めてもいいのだ。わかっているのか?その自由をお前は既に手に入れているのだよ」
「じ、ゆう?」
「我が家に来た日から。お前を縛るものなど何もなかったのだ。」
その言葉を飲み込むまで。受け入れるまでどれ程の時間を要したのか覚えていない。
いつの間にか主人は目の前からいなくなっていた。
チャイを縛りつけていたものは、煌の民でもAでもない。チャイ自身だった。
そう理解した途端、チャイはぺたんとその場に座り込み、しばらく動くことができなかった。
夕暮れ間近、我に返ったチャイは自分のすべき事を思い出していた。
これからのことはどうであれ、今は主人が遠征に連れてきた侍女だ。
夕飯の準備をしなくてはならない。
厨房へ急ぐと、侍女達を取り仕切る担当者がおり、それぞれの役割を告げていく。
チャイは野菜を洗い、皮を剥く係だった。始めはこんなに大量な野菜をこなせるだろうかと困惑したが、先に茶色い服を着た女達が黙々と作業をこなしていた。
手伝いの人達だろうか??
はじめはそう思い、「よろしくお願いします」と挨拶してみたがどうも様子がおかしい。
笑顔もなく、口は糸縫われているのではないかというくらい、話をしない。
ドックンと身体中が脈打った。
まさか・・・。この女達は。
「どうしたの?チャイさん?」
不思議そうに他の侍女達が首を傾げてチャイを見ていた。
「あの、この人達・・・」
「奴れい達がどうかしたの?私達だけでは手が足りないだろうから、総督府が遣わしてくれたときいているけど?」
当然のように言われてチャイは身が震えた。
改めて奴れい達を見ると、うつろな目でチャイを見ている。
ゾッとした。
どれだけ滑稽な話なのだろう。自分は自由だと諭され受け入れた瞬間からチャイは被害者ではない。
加害者になっていたのだ。
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白夜 - ショ、ショタだ (2014年12月7日 21時) (レス) id: c4aa6ec47d (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» え!登場しないから!?うん!でも、ほら!道なきの方で活躍してるから (2014年11月17日 20時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - こーくんかわいそう・・・ (2014年11月17日 19時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 白夜さん» 更新が遅れていて大変申しわけありません。本編再開です。紅炎は一切出てきませんが今後に関わってくるお話です。 (2014年11月16日 20時) (レス) id: da72338801 (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - ありがとうございます! 思わず叫んでしました! (2014年11月13日 16時) (レス) id: 1769d2b610 (このIDを非表示/違反報告)
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