88話 ページ39
『紅徳帝が御隠れなさいました！
置いていかれるのは嫌だと泣いたばかりのアランを置き去りにするのは忍びなく、共に馬に乗せ、慌ただしく屋敷に戻ると、にこやかに紅輝を迎える章妃がいた。
「ただいま戻りました！母上」
「ええ。あら、いらっしゃい。アラン殿」
「えへへ〜。うん！こんにちは」
おっとり、いつも通りの挨拶を交わす章妃に思わず紅輝は前のめりになってしまう。
今回の
自国の皇帝が死んだのだ。
これから一体どうなるのか。とにもかくにも、紅炎達と合流しなくてはいけない。
「紅徳帝の事はお聞きになられましたか？」
「もちろんですよ。帰国のための準備を整えさせているところです。」
章妃が視線で指す先では、足早に出立準備を整える従者達が見えた。
一様に、黙々と作業をこなしてはいるが、表情は明るいもの様に見える。
・・・？
「母上？なぜ笑っていらっしゃる？」
「なぜ？紅炎様がようやく、
「母上！」
「お前こそ、何を取り乱すのです。しっかりなさい。」
紅炎が作り上げた箱庭の中で、世間の荒波を知らず、おっとりすぎるほどおっとりしていた母はどこに行ったのか。
章妃は
「貴方は、練 紅炎、唯一の後継ぎ。その両肩にかかる重責はこれまでとは比になりませんよ。」
言われていることは理解できる。
紅徳帝が死ねば、その跡を継ぐのは当然、長男の紅炎が最もふさわしい。
血筋だけで言えば、白徳帝の息子、白龍の名も上がるだろうが、
けど、紅輝を困惑させたのはそんなことではない。
人の上下など
迷いに迷った末、紅輝は覚悟を決めた。
自分の知っている母親に戻って欲しかったのかもしれない。
あるいは、自分の声なら届くと。
「確かにおっしゃる通りです。ですが！今は、死者の
「紅輝。その言葉、決して御父上の前では言ってはなりません。」
一も二もなくぴしゃりと切り捨てられ、章妃は奥へと姿を消していった。
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飛燕(プロフ) - S夢さん» コメントありがとうございます。第2章がスタートしています！そちらもお楽しみください。 (2017年8月11日 6時) (
レス) id: 54f2f8f6b1 (このIDを非表示/違反報告)
S夢 - 主人公の心情がとても切なくて…！紅炎さん会いに行ってと思っても会ったら会ったで崩れそうで…。もう最高です！ひっっさしぶりにこんなに心に入ってくる話を読みました！更新頑張ってください！！ (2017年8月10日 21時) (レス) id: 7a4424b033 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - 薙刀桜餅さん» コメントありがとうございます！その二人は第２章あたりからじわじわ再登場予定です(笑)これからも宜しくお願いします (2017年8月7日 20時) (レス) id: 54f2f8f6b1 (このIDを非表示/違反報告)
薙刀桜餅(プロフ) - 初めまして！このシリーズがものすごく好きです！自分的には、紅覇様とティラちゃんのカップルが好きです、これからも更新がんばってください！ (2017年8月7日 19時) (レス) id: 2c35b59c63 (このIDを非表示/違反報告)
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