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241話 ページ10

「シンドバッド、おかえり〜」
「かあさん・・・?」
「もう、早く帰って来なさいって言ったのに、どこまでお使いに行ったのかと思ったわ」

そう言われて自分の手に買い物袋がある事にはじめて気がついた。
母は「ありがとう」と笑いながら、早速、買ってきたばかりの香草を鍋の中に入れていく。

「今帰った」
「お帰りなさい、アナタ」
「お。母さんの手伝いをしてたのか?偉いな、シンドバッド」

ぐりぐりと、乱暴なくらいの豪快(ごうかい)さで頭を()でてくる父の行動でようやく自分が子供なのだと気が付いた。

「とうさん・・・」
「は!?なんで泣く?おい!どうした??」

大袈裟(おおげさ)なほど慌てふためく父の姿を見て母が笑う。
胸がいっぱいになる程幸せな光景だった。


「シン。シン、起きてください」

胸いっぱいのシンドバッドを呼ぶ声があって、シンドバッドは両親の姿が幻だったのだとようやく納得した。
父は戦死し、母は貧しさ故、病で死んだ。
あんな幸せな時間もあったのかもしれないが、幼さ故よく覚えていないのが現実だった。

もう少し両親の夢に(ひた)りたかったが、意識が戻ってしまった以上、続きは無理だろうと渋々(しぶしぶ)目を開けた。

潮の匂い。
波の音。
シンドリア商会の旗が大空に(ひるがえ)るその先にカモメが飛ぶ。

そうだ。ここは、シンドリア商会の船の上。

「もうすぐ、次に街に着きますよ。ほら!」
「次はどんな街かなぁ!!!」
「ああ!いい商売ができそうだ。」

聞こえてくる楽しそうな声にシンドバッドは笑った。
船員達が久しぶりの陸地に活気づいてるのがよくわかる。

けれど、シンドバッドは少し気鬱(きうつ)だった。
世界は広いが、待ち受けているものはワクワクするような冒険ではなく、ヒリヒリするような展開が常だった。

今度の町ではゆっくりできるといいんだがなぁ・・・。

「いつまで寝ぼけてるんだ?シンドバッド」

眉を吊り上げながら現れた少女は、遠慮なくシンドバッドの耳を引き上げた。

「い!痛い痛い!!よせ!セレンディーネ!」

ふっと勝気に笑った少女にへにゃっと情けない笑顔を返そうとした途端だ、世界が変わった。

燃え上がる街からは、悲鳴さえ途絶え、肉が焼ける匂いがする。

「セレン・・・ディーネ?」

一体何が起こっているのか頭がついていかない。

黒い物体に飲み込まれているのは本当に彼女なのだろうか。

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飛燕(プロフ) - わわさん» ありがとうございます。最終章の続きはスピンオフシリーズ4の『星を抱くもの』になっています。よろしくお願いします (2021年11月6日 8時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
わわ - めっちゃ好きです!!ありがとうございます!! (2021年11月6日 0時) (レス) id: 3f77deffba (このIDを非表示/違反報告)
Haruhi(プロフ) - 初コメント失礼します、最初のシリーズからずっと読ませていただいてて、本当に世界観に引き込まれる素晴らしい作品です!マギの原作と同じくらいハラハラドキドキしながら楽しませてもらっています!これからも楽しみにしています(^^) (2020年4月30日 14時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年12月14日 7時

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