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5話 ページ49

途端、流星の表情が(こお)りついた、ように見えた。

「あ……、そんなこと言ったか?ワリィ!ほら、もう家の中に戻れよ」

アラン。
確かに流星はそう呼んだ。

誰なんだろう。
生き別れた弟とか?

心あたりがないなりに、心のどこかで引っ掛かりを覚えた。


数時間後、本当に嵐がやって来た。
木々は恐ろしいほど揺れ動き、叩きつけるような雨が一向に止まない。
戸の隙間(すきま)からビュウビュウと恐怖を(あお)るような音が聞こえてくる。

「怖いわ。まだ、通りすぎないのかしら」
「もう少しだよ。母様」

怯える母の為に温かい飲み物をと思い、カリッアは台所へ向かった。

ん?

外へ行くための戸が僅かに開いていた。
誰かが閉め忘れたのだろうか。
下履きをはいたカリッアが、戸を閉めようとしたとき、激しい雨の下に流星が立っていた。

一体、何を。

いや、何でも良い。
早く中に戻るように声をかけようとしたときだ。

流星の体が光輝いた直後、人の体が溶けた。
やがて姿を見せたのは、見事な(たてがみ)を持つ、漆黒(しっこく)の馬。

それだけでも信じられないと言うのに、馬は宙を駆け、嵐の中に消えていった。

一体、自分は何を見たのだろう。

体調が悪いと言って布団に(もぐ)りこんだカリッアだったが、だんだんあれは幻だったような気がした。

そうだ。
きっとそうだ。
大体、人間が馬になるわけがない。

カリッアは無理矢理目を閉じた。



カリッアは、いつの間にか海辺にいた。
波の音に混ざり聞こえる子供の笑い声。

少年が黒い馬に乗り浜辺を走る姿が目に入った。

ああ、夢か。

なんとなくそう理解して、ぼんやり浜辺を見ていると、少年は馬と追い駆けっこを始めた。

随分馴らされた馬だなぁ。

「こっちだよぉ!りゅーせーーー!!」

え…?

聞き覚えのある名前にカリッアは思わず腰を浮かせた。

「きゃははは!!くすぐったいよ!りゅーせー!」

鼻を押し付けられ、少年は笑い転げている。

似てる。
あの子供………、俺??

「りゅーせー、だいすき!!ずっといっしょにいようね!!」


違う!違う!!
やめろ!流星は俺の家族なんだ!

誰だ!
お前は誰なんだ!!!


「おーーーい。寝坊助。いい加減に起きろよ」
「流星?!」

うわっっと跳ね起きたカリッアに流星はからっと笑った。

人間だ。

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飛燕(プロフ) - わわさん» ありがとうございます。最終章の続きはスピンオフシリーズ4の『星を抱くもの』になっています。よろしくお願いします (2021年11月6日 8時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
わわ - めっちゃ好きです!!ありがとうございます!! (2021年11月6日 0時) (レス) id: 3f77deffba (このIDを非表示/違反報告)
Haruhi(プロフ) - 初コメント失礼します、最初のシリーズからずっと読ませていただいてて、本当に世界観に引き込まれる素晴らしい作品です!マギの原作と同じくらいハラハラドキドキしながら楽しませてもらっています!これからも楽しみにしています(^^) (2020年4月30日 14時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年12月14日 7時

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