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272話 ページ41

「わかった。では、そうしよう」
「ほんとう?!いーの??」

やったぁ!とはしゃぐアランの笑顔にあるのはもはや幼さだけではなかった。

己の命運さえ()けても、傷付き倒れていく友人達を見守ることしか出来ない身の上。

チャムスは体を()して背中に乗るようにアランをうながした。

「さあ、アラン。アルガン島に帰ろう。僕達の故郷に」
「うん!!」

太陽のような笑顔をのせ、チャムスは自分の宮殿に戻った。

チャムスと玉響は宮殿に厳重な鍵をかけた。
王の眠りを何人たりとも侵すことがないよう。

何年後でも何十年後でもいい。

彼らの王が、この鍵を自ら開ける日を待ちわびて。




戦いから2日後。アルパ。

かつて都があった場所にシャロットは立っていた。今はただ(かわ)いた土地が広がるばかり。
見える周囲の景色も変わってしまった。

少し肌寒い風に吹かれていると、背後から数名の足音が聞こえてきた。

「シャロット王」
「陛下」

アルパの兵士たちだ。
探していたのだろう。余計な手間をかけさせてしまったと反省しながら、シャロットはいつものように穏やかに微笑んだ。

「ああ、すまないね。探したかい?」
「いいえ、このような場所で何か?」
「この景色を目に焼き付けておこうと思ってね。」

見る限りの更地。
シャロットが人生の半分を過ごした場所は呆気なく消え失せた。

なにも知らない人が見れば、誰もこんな山頂に都があったなど想像もつかないだろう。

「僕が当たり前だと思っていた景色は、決して当たり前なんかじゃなかったんだね」

気が遠くなるほどの年月をかけ、先人たちが少しずつ築いてきたものだったのだ。
わかっていた。

わかっていたはずだが、わかっていなかった。

「何か用があったのかな?今戻るよ」

いつものように足を進めようとしたときだ。
兵士たちが膝を折り深々と頭を下げた。

「我らが王よ」
「どうか我々をお導きください」


「もちろんだよ」

それが、産まれてきた理由なのだから。

山の(ふもと)に、民が身を寄せる集落があり、少し離れた港には客人を迎えるための屋敷があった。
外交を始めるためにと紅炎に作らせたものだが、こんなときに役立つとは思っていなかった。

「紅炎!聞いたよ、民達の傷を癒してくれたそうだね。なんて無茶をするんだい!」
「大した事はしていない」
「君のフェニックスが有能なのは知っているが、主である君が無理をすれば悲しむよ」

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飛燕(プロフ) - わわさん» ありがとうございます。最終章の続きはスピンオフシリーズ4の『星を抱くもの』になっています。よろしくお願いします (2021年11月6日 8時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
わわ - めっちゃ好きです!!ありがとうございます!! (2021年11月6日 0時) (レス) id: 3f77deffba (このIDを非表示/違反報告)
Haruhi(プロフ) - 初コメント失礼します、最初のシリーズからずっと読ませていただいてて、本当に世界観に引き込まれる素晴らしい作品です!マギの原作と同じくらいハラハラドキドキしながら楽しませてもらっています!これからも楽しみにしています(^^) (2020年4月30日 14時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年12月14日 7時

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