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260話 ページ29

「シャロット、生きてる?」
「ギリギリね…」

Aに声をかけられのろりと返事を返した。大袈裟(おいげさ)ではない。城下への犠牲を減らそうと結界を張り続けていたシャロットの体力は尽きかけている。

顔をあげると紅炎とアリババから火炎が放たれているところだった。

シャロットは始めて『悔しい』と思った。
グエンツェンは戦闘向きのジンではない。そんなことはわかっている。

けれど、こんな時、自分の国を破壊する(やから)に反撃のひとつもできない。

ぐっと歯を食い縛ったその時だった。
貧血を起こしたときのように体が傾き、抵抗する間もなく視界が真っ黒に染まった。


シャロットが、意識を浮上させた場所はアルパではなかった。

どこだ?ここは。

訳もわからぬまま、シャロットが周囲を見渡すと、一頭のイグアナが涙を流していた。

グエンツェン?

双頭でもなければ、いつものように眼鏡をかけた姿でもない。四つ足のただのイグアナだった。
それでもシャロットはそのイグアナをグエンツェンだと思った。

「どうしたんだい?グエンツェン」
『同じなんだ。王よ』
「同じ?」

(うろこ)を涙が流れていく。
シャロットにはそれがこの上なく美しいものに見えた。

『あの時も私はなにもできなかった。己の無力を呪う事しか出来なかった』
「おいで、グエンツェン。君は僕だ。君が悲しむ姿を見ていると胸が締め付けられるよ」

(ひざ)の上にグエンツェンをのせ優しく抱き締めてもグエンツェンの涙は止まらない。

『すまない、王よ。私にもフェニックスのように他者を癒す力があれば。アシュタロスやバルバドスのような他者を滅する力があれば…』
「何を言う。君のお陰で僕はこれまでやってこれたんだよ……」

それは数えきれないほどに。
その時だった。ふと、記憶の底に眠っていた言葉が頭に浮かんだ。


真の闇


「いつか君は言っていたね。『真の闇を晴らすのは光しかない』と」

今の状況がまさにそれなのではないだろうか。

そう思い至ったとき、別の方からもう一頭のイグアナが姿を見せた。

「君は……?」
『王よ、我らの王よ。』

慈愛に満ちた母親のような目をするイグアナは、痛みに耐えるような表情をしていた。

『『我々はずっと貴方をお待ちしていた』』

『我々には他者を癒す力はありません』
『我々には他者を滅する力はありません』

『『けれど、我々には他者にはない力を持つ。』』

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飛燕(プロフ) - わわさん» ありがとうございます。最終章の続きはスピンオフシリーズ4の『星を抱くもの』になっています。よろしくお願いします (2021年11月6日 8時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
わわ - めっちゃ好きです!!ありがとうございます!! (2021年11月6日 0時) (レス) id: 3f77deffba (このIDを非表示/違反報告)
Haruhi(プロフ) - 初コメント失礼します、最初のシリーズからずっと読ませていただいてて、本当に世界観に引き込まれる素晴らしい作品です!マギの原作と同じくらいハラハラドキドキしながら楽しませてもらっています!これからも楽しみにしています(^^) (2020年4月30日 14時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年12月14日 7時

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