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256話 ページ25

それは白瑛にとって、最も幸せだった時間。
それはシンドバッドにとって、懺悔(ざんげ)と安息の時間。

「けれど、これ程残酷な世界もない」

死人すら生き返り、人は愛を謳歌(おうか)する、本人が望むままの世界。
けれど……、この世界にのめり込めばのめり込む程現実に戻れなくなる。

「純粋はときに残酷だ」

子供がただの好奇心で、虫の羽をむしとるように。
玉響がアランの頬を舐めると、アランは嬉しそうに頬を緩めた。

「アルガン島がにーにの願い」

なんでも出来るのに、何も出来ない王。

背後に気配を感じてアオバは後ろを振り返った。

「あんた、また来たの?」

コレットだ。
何度かアランの世界に迷いこんで来たけれど、またやって来たらしい。

目をぱちくりさせて周囲を見回している。

「ここにはアンタのパパもママもいないわ。帰りなさい」

腰に手をあてたアオバがコレットを追い出そうとすると、コレットはアオバの服を掴んだ。

「た……」
「何よ」
「た、す…けて……」

カッと頭に血が上った。

「うるさい、うるさい!!帰れ!!」

アオバは力付くでコレットを追い出した。
コレットの置かれている状況はわかっている。
助けを求めて必死にここまでやって来たのだろうか。

けれど、それでも。

「これ以上、にーにに、どうしろっていうのよ……!」

怒りながらもアオバは、眠り続ける兄の姿に涙を落とした。





(まぶ)しい。

ここは?
俺は…?

足掻(あが)くような思いで、シンドバッドは目を開けた。

「シンドバッド様!気が付きましたか?」

見知らぬ女だった。
視線だけで周囲を伺うと、様々な魔法具に自分が繋がれているのがわかった。

視野が広がるにつれ周囲にいるのは女一人ではない。
複数の人間が慌ただしく動いていた。

「俺は……?」
「新しいお体に不自由はありませんか?」
「新しい…体?」
「アランが用意してたんだ」

涙ながらに、シンドバッドの生還(せいかん)を喜ぶ人々とは違い、男はやれやれとめんどくさそうに近付いてきた。

「んで、ここはマグノシュダット。俺はチャムスの眷族で流星。それと…」
「ユナン!!」
「やぁ、久し振り。シンドバッド」

アランの呼び掛けに応えたジン達は、ダビデ復活を阻止(そし)しきれないと判断した。
そこで、あえてシンドバッドの体をダビデに奪わせるという方法を思い付いたのだ。

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飛燕(プロフ) - わわさん» ありがとうございます。最終章の続きはスピンオフシリーズ4の『星を抱くもの』になっています。よろしくお願いします (2021年11月6日 8時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
わわ - めっちゃ好きです!!ありがとうございます!! (2021年11月6日 0時) (レス) id: 3f77deffba (このIDを非表示/違反報告)
Haruhi(プロフ) - 初コメント失礼します、最初のシリーズからずっと読ませていただいてて、本当に世界観に引き込まれる素晴らしい作品です!マギの原作と同じくらいハラハラドキドキしながら楽しませてもらっています!これからも楽しみにしています(^^) (2020年4月30日 14時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年12月14日 7時

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