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254話 ページ23

自分の命。意思。尊厳。そのすべてが誰かの支配下にある恐怖。

アランが否と言えば、この世界では抵抗さえ無意味。

「さあ、シンドバッド。共に眠りにつこう」
「セレン、駄目だ。ここはおかしい。一刻も早く現実に戻らなくては……」

セレンディーネは不思議そうにシンドバッドを見つめ返した。

「言っただろう。既に私は死人だ。残されていたルフの欠片も消え去った。ここにいる私はお前の『願い』が存在させているセレンディーネだ。戻る世界など私にはない」

シンドバッドは顔を覆った。
なんて。
なんて、酷薄(こくはく)な能力だ。

甘い密を与える一方で、その命運の全てを掌握(しょうあく)する。

また、流星がひとつ流れた。

「また一人、向こうに戻った。一体何が起こっているんだ」
「心揺れる必要はない。お前の願いは心穏やかにここで過ごすことだろう」
「知りたいんだ。教えてくれ」

絡み付くセレンディーネの体を引き離し、強く願った途端だ。

空がモニターの役目を果たし、アルパの現状が映し出された。
ダビデに乗っ取られたシンドバッドの体が、攻撃する様子やそれに必死に抵抗する紅炎達の姿。

「な……!」

続く言葉もない。
人々は逃げ(まど)うが、首都が山頂にあったために下山するしか逃れる術がない。ところが逃げる住人の頭上に、岩や石が次々に飛んでくるのだ。

血を流し、助けを叫ぶ人々にシンドバッドは思わず立ち(すく)んだ。

俺は…、俺はいったい何をしている!!
一刻も早くあそこに戻らなくては!

戻る………。
一体どうやったら戻れる?
セレンディーネを切り倒せとでも言うのか。

「君が言っていた『アラン王』とは俺も知っている『アラン』か」

信じられないほど震えた声に、セレンディーネは優しく微笑んだ。

「だとしても。お前にできることはもう、ない」

細い腕がシンドバッドの体を包む。

「私とここで過ごそう。この世の終わりがくるその日まで」

幸せそうに寄り添うセレンディーネとは正反対に、シンドバッドは顔を片手でおおい、体を震わせた。

「そうか。そうだったのか………」

この『セレンディーネ』は、シンドバッドが願った姿。
何度も何度も彼女はいい続けたではないか。
この世界はシンドバッドの『願い』で出来ている。…と。

この世界にシンドバッドを縛り付けていたのはセレンディーネでもなければ、アランでもない。

シンドバッド自身だ。

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飛燕(プロフ) - わわさん» ありがとうございます。最終章の続きはスピンオフシリーズ4の『星を抱くもの』になっています。よろしくお願いします (2021年11月6日 8時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
わわ - めっちゃ好きです!!ありがとうございます!! (2021年11月6日 0時) (レス) id: 3f77deffba (このIDを非表示/違反報告)
Haruhi(プロフ) - 初コメント失礼します、最初のシリーズからずっと読ませていただいてて、本当に世界観に引き込まれる素晴らしい作品です!マギの原作と同じくらいハラハラドキドキしながら楽しませてもらっています!これからも楽しみにしています(^^) (2020年4月30日 14時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年12月14日 7時

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